研究実績の概要 |
IgG4関連疾患(IgG4-RD)は、血清IgG4値高値、組織IgG4 陽性細胞浸潤を特徴とする原因不明の線維形成性病変である。本疾患は血管でも生じ、多くは炎症性大動脈瘤、動脈周囲炎を呈する。IgG4-RDの病因として、局所のヘルパーT細胞のバランスの乱れが注目されており、種々のサイトカイン(CKs)が放出され、線維増生やIgG4陽性細胞増加が起きると推察されるが、血管でのIgG4-RDの病因は未だ不明である。本研究では、CKsバランスに注目し、IgG4関連血管病変(IgG4-AAA)の病態、機序を解明する。 切除材料のIgG4-AAA、IgG4非関連炎症性大動脈瘤、通常動脈硬化性大動脈瘤、解剖例の正常動脈を対象とし、術前血清CKsを測定し、組織のCKs発現細胞を免疫染色及びIn situ hybridizationにて同定した。 血清 IL-10は、他の3群に比較しIgG4-AAAで高値であった。組織ではIL-10,IL-13陽性細胞がIgG4-AAAで有意に高頻度であった。IL-4, IFN-γでは血清値、組織でIgG4-AAAと他の3群との有意差はなかった。血清IL-6はIgG4-AAAで極めて高値であった。組織でもIgG4-AAAの外膜にIL-6が多数分布しており、血清IgG4 値、外膜肥厚と相関があった。dual In situ hybridizationではIgG4-AAAの外膜で、IL-6とCD34, CD168と共発現が確認され、血管内皮細胞、組織球、繊維芽細胞のIL-6産生が示された。 IgG4-AAAにおけるCKs発現には、2側面があり、1つはIL-10, IL-13が優位なTh2優位又はTreg優位な環境であり、他臓器のIgG4-RDと同様のCKsバランスである。もう1つは、特徴的なIL-6産生であり、血管炎としてのIgG4-AAAの側面を示す。
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