研究課題/領域番号 |
26462122
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
中島 崇裕 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (20400913)
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研究分担者 |
金田 篤志 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10313024)
吉野 一郎 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40281547)
吉田 成利 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90334200)
松下 一之 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90344994)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 経気管支肺生検 / 超音波気管支鏡ガイド下生検 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
平成26年度研究計画に基づき、以下の研究を行った。 ①気管支鏡検体バンクの維持に関して、平成26年度は超音波気管支鏡ガイド下針生検49検体、経気管支肺生検22検体、CTガイド下肺生検4検体、胸水2検体、生検針洗浄検体16検体に対して、凍結検体保存を行った。②生検検体保存最適化に関する研究として、超音波気管支鏡ガイド下針生検60症例108検体を対象に、既存の組織凝結塊を作成する方法に加え、liquid base cytology(LBC)を応用しセルブロックを作成する方法を検討した。その結果、LBC群ではより高率に組織診断可能な検体を得ることができ、EGFR遺伝子変異検索においても既存の方法と差異なく変異検出が可能であった。③マルチプレックスバイオマーカー解析に関しては、既知の分子標的マーカー(EGFR、K-ras、BRAF、ALK、ROS1、RET)に関して、multiplex PCRを用いて検出する方法を確立し、臨床検体で解析を行った。さらにFGFR1に関しては、遺伝子増幅を同様に検出する系を作成し、検出結果はFISH法による確認を行い、PCRの結果と一致していることを確認した。④腫瘍細胞培養法の開発に関しては、超音波気管支鏡ガイド下針生検症例に関して、これまで16症例について、コラーゲンゲル培地を用いた培養を試みた(うち1例はリンパ腫であることがのちに判明し解析から除外した)。15例中12例で細胞培養に成功した。⑤予後不良な肺腺癌組織亜型であるmicropapilalry patternを含む症例について、次世代シークエンサーを用いた網羅的遺伝子発現解析を行った。その結果、micropapillary patternを含む肺腺癌では、papillary patternと似たクラスターを示すが、ポリコーム遺伝子群の一つであるEZH2が高発現していることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①気管支鏡検体バンクに関しては、予定通り検体集積が進んでいる。今後、さらに対応する血清検体の収集に関しても、現在検討中である。②生検検体採取保存の最適化に関しては、liquid base cytologyによる採取法に一定の評価が得られた。検体の質に関しても、これまでの検体と同様に遺伝子変異解析が可能であることが示された。これらの結果も踏まえ、検体採取保存法に関するガイドラインを世界気管支学会のtask force memberとして論文報告した(Respiration. 2014;88(6):500-17.)。③マルチプレックスバイオマーカー解析に関しては、主要6種のマーカー検出法は確立し、臨床で使用できるレベルとなっている。遺伝子チップを使用した網羅的解析と比較するとコスト面での有用性は明らかであり、今後はquality controlをいかに行うかが課題となる。さらに今後、遺伝子増幅系のマーカーに関しても追加できる環境を整備していく。④微小生検検体からの腫瘍細胞培養法の開発に関しては、コラーゲンゲル培地を使用し培養可能であることが示され、feasibilityはクリアできたものと考えている。今後は培養の成功率をいかに高めていくかを検討していくとともに、薬剤感受性試験の開発を今後行っていく。⑤EZH2発現解析に関しては、まず肺腺癌のうち予後不良な微小乳頭型のサブタイプにおいて高発現していることを見出した。現在、他の組織亜型も含めて、検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
①気管支鏡検体バンクに関しては、これまで通り検体採取、蓄積、保存を行っていく。②生検検体採取保存の最適化に関しては、針生検施行時にCore組織検体の採取が困難な症例に関しては、積極的にliquid base cytologyを活用したセルブロックの作成を推進していく。これに関する設備環境を整備していく。③マルチプレックスバイオマーカー解析に関しては、遺伝子増幅を認め、さらに薬剤感受性に関連するバイオマーカーとしてMETおよびFGFR1の検出系を確立する。さらに、DDR2、PTEN、PI3CAに関してもマルチプレックス解析に含めるよう、改善していく。本検査法のコストを計算し、実臨床における有用性を、次世代シークエンスやgene chipと比較しながら検討する。④微小生検検体の培養に関し、培養成功率のさらなる向上をめざし、培養にいたるまでの最少の腫瘍細胞量について検討を進める。また、培養細胞を用いた薬剤感受性試験の実施および抗がん剤治療を行った症例に関しては、治療奏効率について検討を行っていく。⑤EZH2の発現に関しては、これまで報告のある小細胞癌との比較検討を行うとともに、大細胞神経内分泌癌に関しても検討に加え、網羅的遺伝子解析も含めた解析をすすめる。また、エピゲノムの変化として、メチル化解析を合わせて行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
liquid base cytology検体におけるEGFR遺伝子変異解析において、サンプル量が限定されているため、年度末において検体処理を行うこととなり、病院病理部と協議のうえ3月末に検体を処理し、遺伝子解析を4月初めに行うこととなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
パラフィン包埋検体を使用した遺伝子解析のために使用する消耗品、試薬および遺伝子解析費用に使用する。
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