研究課題
平成26年度は、EGF刺激によるGEP100-Arf6活性化を介した癌の浸潤転移能促進経路の詳細なメカニズムを解明する上で、重要な構成分子メカニズムの発見を目標に以下の成果を得ることができた。1.アダプター分子Grb2のEGFRとGEP100の結合促進に与える影響我々は、Grb2がGEP100と結合することを293T細胞の抗GEP100抗体による免疫沈降実験により確認した。この結合は活性化したEGFRやEGF刺激とは関係なく起こることもわかった。またA549肺癌細胞にてGrb2を過剰発現させた細胞溶解液を用いて、抗GEP100抗体で免疫沈降実験を行った。Grb2の発現量に応じて、EGF刺激を受けた活性化EGFRとGEP100との結合量が増加し、Arf6もより活性化することが示された。GEP100やGrb2の変異型やトランケートしたベクターを用いることで、GEP100とGrb2の結合がGEP100のPHドメインとGrb2のN末SH3およびSH2ドメインを介して行われることが判明した。2.網羅的結合分子の探索SILAC法を用いたmass spectromyによる解析を行った。A549、MDA-MB-231細胞を安定同位体アミノ酸を含むもしくは含まない培養液で2週間培養し、EGF刺激を行ったものとスターブしたものを別々に細胞溶解液とし、混合して抗GEP100抗体で免疫沈降を行った。EGF刺激に応じたGEP100結合分子のみがより特異的に検出されると考えた。複数回の解析を行った結果、全てで検出された分子がHsp90betaとABCF1 transporterであった。Hsp90betaは、再構成系による免疫沈降実験でGEP100のPHドメインと結合する可能性が高いことが分かった。
2: おおむね順調に進展している
EGF刺激に応じてEGFRとGEP100が結合して、EMTに重要なArf6の活性化を促進する機序の解明において、Grb2がこの二分子の結合を増強することを見出した。現在、学会発表および論文投稿準備中である。また、その他の分子の結合による影響や細胞内環境による結合能の変化については、今後の検討課題である。
平成27年度には、EGFRとGEP100、Grb2の3分子複合体について解析をすすめ、学会や論文で発表する。臨床検体によるこれら3分子複合体の重要性を確認したいと考えている。また海外との共同研究を行い、Grb2によるGEP100のallostericな変化によるPHドメインとチロシンリン酸化キナーゼの特異的結合様式を検討する予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)
UCHL1 provides diagnostic and antimetastatic strategies due to its deubiquitinating effect on HIF-1α.
巻: Jan 23;6 ページ: 6153
10.1038/ncomms7153.
BMC Genomics
巻: Dec 8;15 ページ: 1079
10.1186/1471-2164-15-1079.
Ann Surg Oncol
巻: 21(8) ページ: 2546-54