研究課題/領域番号 |
26462127
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
先山 正二 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (60291986)
|
研究分担者 |
滝沢 宏光 徳島大学, 大学病院, 講師 (90332816)
川上 行奎 徳島大学, 大学病院, 特任講師 (00596249)
鳥羽 博明 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (40403745)
梶浦 耕一郎 徳島大学, 大学病院, 助教 (60596253)
坪井 光弘 徳島大学, 大学病院, 特任助教 (10711872)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 肺の再生 / 胎生期肺 / 肺組織移植 / 肺線維症 / 豚 / ラット / ステロイド |
研究実績の概要 |
今回の研究テーマの最終的な実験モデルはブタであるが、これまでの経験を踏まえて、適宜ラットやマウスでの関連実験を行いつつ、研究を進めている。現時点ではブタでの肺線維症モデルの完成には至っていない。その主たる要因として、肺線維症モデルの作成にあたっては、我々がこれまで実験を行ってきたラット肺線維症モデルに準じた経気道的投与を考えていたが、投与後の咳嗽により喀出される投与薬剤による研究者への薬剤暴露が問題となる可能性がでてきたため、現在その対策を進めているところである。一方で、ステロイド投与による胎生期肺組織の生着への影響をみる検討項目に関しては、ラットを用いた予備実験において次のことが明らかになった。レシピエント成体肺内に胎生期肺組織を注入移植した後に、レシピエントにbetamethasone(0.2mg/kg/day)を皮下に埋め込んだ浸透圧ポンプにより移植後0日から6日まで7日間持続投与すると、同様に7日間生食を投与した場合と比較して、移植した胎生期肺組織の生着と分化が促進された。特に肺胞レベルでの分化生着が、レシピエント肺組織との連絡という点で重要であると考えられた。気管支レベルの胎生期由来組織が分化した部分は、周囲のレシピエント組織と有効と考えられる連絡は認められなかったが、一方で、胎生期肺組織が肺胞に分化する領域においては、肺胞に分化、増殖し、レシピエントの肺胞と癒合し、肺胞内に含気を認めた。移植に用いる胎齢17日(腺様期)の胎生期肺組織は気管や中枢側の気管支が混入しないようにし、EMDM培地内で細切するが、これらを必ずしも完全に除去できていない場合には、成体肺内に生着した胎生期肺組織なかにドナー由来の軟骨が過形成を示す場合も認められた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ブタにおける肺線維症モデルの作成が遅れている。その一つの要因として、経気道的に投与したブレオマイシンが咳嗽時に喀出された際に研究者がブレオマイシンに暴露される恐れがある点である。この点に関しては、研究者の防護具の着用と、経気道的投与方法の変更を考慮している。単純に気管支鏡を目的とする肺葉気管支にウエッジし、気管支鏡のチャンネル孔よりカテーテルを挿入しブレオマイシンを注入するとしていた方法の変更を考慮している。 一方で移植した胎生期肺組織片に及ぼすステロイドの影響をみる検討においては、ラットを用いた予備実験において、ステロイド(betamethasone)をレシピエントに7日間投与することにより、移植肺組織の肺胞レベルでの肺胞の分化・増殖、特に分化が促進することが分かった。形態的に肺胞レベルの細胞が立方状からより扁平化し、それに伴い含気領域の増加が認められた。Elastica van Gieson染色による検討ではステロイド投与により、生食を投与したコントロールと比較して、肺胞レベルでのエラスチンの発現が増加することを示した。
|
今後の研究の推進方策 |
ブレオマイシン投与時の研究者自身の暴露予防として、ガウン、ゴーグル、マスクの着用で対応する。このこと関連して気管支鏡下の経気道的投与に際して次のような工夫を加えることを検討している。目的とする葉気管支にブレオマイシンを気道内散布した後に、スピゴット(EWS)を用いて関連気管支を一時的に閉塞する。このことにより、気道内に散布した直後のブレオマイシンの喀出を減少させる。後日、閉塞に用いたスピゴットを抜去する。ブレオマイシを投与する肺葉は右中葉(中間葉)を用いる等の点である。これまでの予備実験より、気管支鏡下に散布用カテーテルの挿入し易さ、および薬剤を投与し肺の線維化を惹起した際の肺全体での障害範囲が比較的小範囲に限定されるなどを勘案し、右中葉(中間葉)を選択することとする。ブレオマイシン投与に関するもう一つの方法として経胸壁的に細経カテーテルを右中葉に胸膜表面より肺内に挿入留置し、携帯型ディスポーザルポンプを使用して、ブレオマイシンを当該肺に持続投与する方法を試みることも検討している。動物愛護の観点にも十分に配慮し、病変の作成範囲を必要最小限にし、侵襲が過度にならないようにする。 ブタの実験とラットの実験をリンクさせて実験を推進する。特に、昨年までの結果から、胎生期肺組織移植における肺胞レベルでの肺の生着と分化において、レシピエントへのステロイドの投与が有用であることが明らかとなったので、これに関連した検討を、ブタの実験として行う前に、しばらくはラットを用いて検討を進めたい。 ブタの実験においてドナーとして腺様期の胎仔肺組織を用いることが重要であるが、その都度当該組織を得ることは容易ではないため、その点を考慮し、予備実験としてドナーとして新生仔ブタを用いることも考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
動物飼育料を精算した際に差額が生じたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
実験用の酸素ガスや麻酔薬の購入に使用予定である。
|