研究実績の概要 |
2012年10月~2015年7月 当科にて肺切除を行った多発肺腺癌(SMLA) 51例を含む250例の肺切除症例の非腫瘍部正常肺においてEstradiol/ Estriol の定量を行った。その結果、肺組織中のエストロゲン濃度は55歳未満女性で有意に高値であり、卵巣からの生成の影響が考えられた肺組織中のエストロゲン濃度は55歳未満女性で有意に高値であり、卵巣からの生成の影響が考えられた。また、 55歳以上の症例で解析すると、男性において有意に高値であった(estrone p<0.001, estradiol p<0.001)。 エストロゲンの原料としての精巣から産生されるテストステロンの濃度が関連していると考えられた。以上の結果から55歳以上の非喫煙者閉経後女性の肺癌切除症例113例(SMLA 30例)において解析を行うことにした。 ①同時性多発肺腺癌群(SMLA) 30例とコントロール群 (単発非小細胞癌症例83例 (腺癌 79, 扁平上皮癌 4, 腺扁平上皮癌 1例))と比較すると、estrone (p=0.003), estradiol (p=0.02) 共に多発肺腺癌症例で高値であった。 ②CYP19A1 のSNP rs3764221 のgenotypeと肺内エストロゲン濃度との関連においては、estrone (p<0.001), estradiol (p=0.04) 共にAアレル(AA/AG)で高値であった。 ③CYP19A1のmRNA 発現とCYP19A1 rs3764221 genotypeとの関連においては、rs3764221 Aアレルが有意に高い値であった。 末梢肺のエストロゲン濃度を測定すると、閉経後女性での解析でSMLAにおいて有意に高値であり、SMLAの発生、進行にはアロマターゼの高発現などに伴う肺実質での高エストロゲン環境が関与している可能性がある。
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