研究実績の概要 |
平成26年度から組織からのマイクロRNAの検出を行った。マイクロRNA の発現をマイクロRNA microarray kit を用いて約900のマイクロRNAを網羅的に解析した(3D-Gene, Toray, Kamakura, Japan)。 その後、統合解析を行い、特異的なマイクロRNAを検出した。その結果、組織でのRNAの抽出を行い、腫瘍組織でのマイクロRNAの検出を行い、5種類のマイクロRNAの上昇および5種類の低下を検出した。 この結果を基に、血液での検出が可能かどうか、バイオマーカーとしての可能性について検討を開始した。血液中での遺伝子解析として、肺癌のバイオマーカーとして最も確立されているEGFR遺伝子変異を中心に解析を行った。当科で肺癌の診断で手術を行った症例に対して手術標本と術中に採血した血清を用いて遺伝子変異の検出率を比較検討した。IA-IIIA期の手術切除標本とマッチした患者血清150検体を収集し、遺伝子変異を解析した。 腫瘍組織において検出された遺伝子変異とその検出頻度は、EGFR (37%), TP53 (39%), KRAS (10%)であった。血清を用いた検討では、EGFR (3/150), TP53 (5/150), PIK3CA (1/150)であった。血液中の変異検出率を規定する臨床病理学的因子を検索した結果、腫瘍の優位に体積が関係しているという結果が得られた。病理病期との相関は得られなかったが、Ⅰ期の症例では、血液中で検出されなかった。血液中での腫瘍由来の遺伝子解析では、手術の対象となるような早期の肺癌では、検出が困難であることが示された。 マイクロRNAでも同様の結果が心配され、比較的進行した症例を含めた解析を開始している。
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