研究実績の概要 |
(1)背景:肺気腫合併肺線維症(combined pulmonary fibrosis and emphysema: CPFE)は上葉優位の気腫性変化と下葉優位の線維化が混在する病態である。肺癌患者の8.9%に認められ長期予後も不良である。我々は肺癌手術症例におけるCPFE合併肺癌の臨床的解析を行った。方法:2008年から2012年までに肺癌手術を施行した250例に対してretrospectiveに画像的評価を行い、肺気腫合併肺線維症(CPFE群, 11 例)、肺気腫のみの症例(emphysema群, 108 例)、間質影のみの群(IP群, 7 例)、それ以外の群(normal群, 124 例)の4群に分別し、CPFE症例の臨床的特徴、予後に関して比較検討をおこなった。結果:CPFE群ではすべて男性有喫煙歴で組織型は扁平上皮癌の割合が多く、呼吸機能検査においては、努力肺活量(FVC)や一秒量(FEV1)、一秒率(FEV1%)においては他の群と有意差を認めなかった。予後に関しては4群において有意差を認め(p=0.0016)、CPFE群は最も予後不良であり、多変量解析において単独のリスク因子となった。stageⅠの肺癌症例におけるemphysema群との比較においてもCPFE群は有意に予後不良(p<0.0001)であり、死因として呼吸不全の割合がCPFEで有意に多かった(p=0.0008)。 結論:CPFEは呼吸機能検査では正常値を示す事も多いが、予後に関しては肺気腫のみの症例よりも悪く、さらに癌死よりも呼吸不全で死亡する割合が高い傾向があり、術式の選択や周術期および長期管理に注意する必要があると考えられた。 (2)扁平上皮癌は遺伝子変異の多型が多く、そのためPD-L1の発現が高いと報告されている。実際PD-1阻害薬であるオプジーボは非扁平上皮癌と比較し、扁平上皮癌でその効果が高いと報告されている。今年度は、PD-L1の発現とCOPD,IPとの関連を免疫染色を用いて検討しているところである。その結果は、次年度に明らかとされる予定である。
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