研究実績の概要 |
H27年度の研究目的は、脳梗塞に対するStaphylokinase (SAK) 治療の確立を目指し、更に脳梗塞領域減少を果たすことである。 Ⅰ.心原性脳塞栓症モデルを用いて、Sham群、血栓のみ(PBS群)、組織プラスミノーゲンアクチベーター600μg投与(t-PA群)、SAK 200μg投与(SAK 200群)、SAK 400μg投与(SAK 400群)の5群を作成し、脳梗塞後24時間後に比較した。Ⅰ-1.SAK 400群は、PBS群やSAK200群と比較して皮質梗塞体積、基底核梗塞体積ともに有意に小さく、神経脱落症状も同様に有意に軽症であった。また、SAK 400群はt-PA群より死亡率が低かった。SAK400群ではIgG染色陽性が見られず、血液脳関門(BBB)の温存が示唆された。MMP-9染色では、PBS群、t-PA群で血管内皮に強陽性がみられた。これは脳梗塞域およびPenumbraで見られた所見であり、BBBの障害を表している。Ⅰ-2. 血管基底膜の損傷を観るためにLamininβ-1にて免疫染色を行ったが、5群間での明確な変化を示せなかった。
Ⅱ. 引き続き、一過性中大脳動脈閉塞モデルを用いて抗VEGF阻害剤の内頸動脈直接投与による脳浮腫改善および神経機能温存について検討した。中大脳動脈再灌流後に抗VEGF阻害剤(AF564, R&D, Minneapolis, MN)2μgまたは4μg投与群とPBS投与群を作成し、24時間後の神経症状および脳浮腫を計測した。Ⅱ-1.治療群は両群ともPBSより有意に神経脱落症状が軽度であったが、用量依存性は無かった。Ⅱ-2. 4μ群の皮質梗塞体積がPBS群より有意に小さかったが、基底核では3群間に有意差は無かった。Ⅱ-3. 脳浮腫は2μ群が4μ群よりも少なく、PBS群とは有意差を示した。その機序解明については、今後の課題である。
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