研究課題
脳血管病の中でも脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血は、致死率は約50%となる重篤な疾患である。脳動脈瘤破裂を予防するためには外科的治療方法しかなく、脳動脈瘤破裂を予防するための薬物治療が切望されている。申請者らは脳動脈瘤が閉経期の女性に多いという疫学的事実を基に、卵巣摘出(OVX)高血圧(HT)ラットによる独自の脳動脈瘤モデルを確立した(J Neurosurg 2005)。このモデルの血管壁ではエストロゲン欠乏により、eNOSやERαの発現が低下するが、ERβの発現は高いことを認めた。ヒト脳動脈瘤標本における免疫染色でも脳動脈瘤壁においてERαの発現は認められないが、ERβの強い発現が見られ、ラットモデルと同様な発現所見を確認している。これらはエストロゲン欠乏状態ではERαの発現が低下し、ERβが代償性に働くことを示唆した。さらにマウス脳動脈瘤破裂モデルにおいて、ERβ作動薬はNOを介した脳動脈瘤破裂抑制作用を示すが、ERα作動薬は奏功しないことが明らかにされた。これらの知見を踏まえ、エストロゲン補充療法によるリスクや副作用を少なくして有効性を導くために、エストロゲン受容体β特異的な作動薬を用いた動脈瘤形成、破裂抑制効果を評価し、その有効性のメカニズムを明らかにするという着想に至った。これらが明らかにできれば、新規治療法を構築し、かつ治療標的を新たに見出す可能性も期待される。これまでに脳動脈瘤を再現性良く高頻度に形成するモデルを確立しているが、更に脳動脈瘤破裂に至るモデルの開発にまず取り組んだ。結果、従来モデルにさらに血行動態変化を負荷し、脳動脈破裂が3か月で約40%確認できた。これを破裂モデルとして、用いることとし、現在選択的エストロゲン受容体作動薬(SERM)である バゼドキシフェン酢酸塩(ビビアント)を用いて有効性評価を開始している。
2: おおむね順調に進展している
脳動脈瘤形成モデルは確立していたが、破裂頻度が低いため、薬物効果を評価するには至らなかった。検討を加えた中で、血行動態変化を工夫したことで破裂頻度が3か月で約40%に達し、破裂部位での破裂率は90%となったため、薬効評価が可能となった。
1)SERMを用いて薬効評価をする。2)効果が見られた時点で、有効性を示す作用機序の解明に取り組む3)国際学会での発表や英文雑誌への投稿・掲載を行う。
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J stroke cerebrovasc dis
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