研究実績の概要 |
脳血管周皮細胞の生存には血小板由来成長因子(platelet-derived growth factor: PDGF)の受容体を介した細胞内シグナル伝達が重要であり、PDGF受容体発現抑制マウス(pdgfrβ+/-マウス)では脳血管周皮細胞発現が抑制される。また脳血管周皮細胞が過度に減少したマウスでは胎生期に脳出血死することが知られている。 そこで平成27年度は、研究代表者が以前に報告した方法と同様に、アンギオテンシン(Ang)-II皮下灌流に加えてL-NAME(一酸化窒素合成酵素阻害薬)内服により慢性高血圧状態にした後に、Ang-II皮下注による一過性の急性高血圧を誘導することで脳出血モデルの作成を試みた。 pdgfrβ+/-マウス(雄,8ヶ月齢)8匹とその野生型マウス8匹に対してAng-II皮下灌流(1000ng/kg/分)とL-NAME)内服(100mg/kg/日)を開始したところ、開始3-4日目までに収縮期血圧は100mmHg前後から170mmHg前後に上昇した。その後慢性高血圧作成7日目より一過性の高血圧を誘発するためにAng-IIを皮下投与(0.5μg/g, 2回日, 連日, 最長3週間)したところ、収縮期血圧は一過性に220-250mmHg前後までの上昇を認めた。これらの処置によりpdgfrβ+/-マウス2匹、また野生型マウス2匹に肉眼的に明らかな脳出血の発症を認めたが、脳出血発症率に差を認めなかった。そのため脳血管周皮細胞減少のみが脳出血発症に関連している可能性は低いと判断された。
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