研究実績の概要 |
脳血管周皮細胞の生存には血小板由来成長因子受容体(Platelet-derived growth factor receptor: PDGFR)を介した細胞内シグナル伝達が重要であり、PDGFR発現抑制マウス(pdgfrβ+/-マウス)では脳血管周皮細胞発現が抑制され胎仔期に脳出血死する。 H27年度はpdgfrβ+/-マウスと野生型マウスに対して、既報同様にアンギオテンシン(Ang)-II皮下灌流(1000ng/kg/日)とL-NAME(一酸化窒素合成酵素阻害薬)(100mg/kg/日)内服で慢性高血圧状態にした後に、Ang-II皮下注(0.5μg/g, 2回/日, 連日, 最大3週間)による一過性急性高血圧を誘導することで脳出血モデルを作成し脳出血発症率を比較したが両郡間で脳出血発症率に差を認めなかった。一方で脳出血発症にAng-II由来の活性酸素生成酵素(NADPH oxidase: Nox)の活性亢進が関連することを我々は見いだしている。そこでH28年度はNox4発現亢進マウス(Nox4-Tg)(24ヶ月齢)8匹と野生型マウス(24ヶ月齢)8匹に対して上述と同様の方法を用いて脳出血発症の誘導を試みた。その結果Ang-II皮下灌流とL-NAMEの内服により慢性高血圧を示したが、全身浮腫・心肥大をもきたし薬剤投与7日目までに多くのマウスが死亡した。そのため高齢マウスでは脳出血の発症前に心不全で死亡する可能性が高いと判断された。 そこでH29年度は12ヶ月齢のNox4-Tgマウス8匹と野生型マウス8匹を用いて同様の検討を行った。その結果、慢性高血圧状態下にAng-II皮下注で収縮期血圧は240mmHg前後まで上昇した。6匹のNox4-Tgマウスは経過中に死亡したが解剖で脳融解を認めるものの脳内血腫を認めた。一方で全ての野生型マウスは経過中生存し脳切片で出血を認めなかった。
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