研究課題/領域番号 |
26462164
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
吉川 雄一郎 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (80423515)
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研究分担者 |
溝口 昌弘 九州大学, 大学病院, 講師 (50380621)
天野 敏之 九州大学, 大学病院, 助教 (70448413)
中溝 玲 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (80529800)
栗田 浩樹 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (70262003)
竹田 理々子 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (70649847)
池田 俊貴 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (90406968)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脳血管攣縮 / くも膜下出血 |
研究実績の概要 |
本年度は、マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析によりくも膜下出血(SAH)後に有意な発現変動を認めた分子のひとつであるrelaxinに関してさらなる検討を行った。まず、ウサギくも膜下出血モデルの脳底動脈における発現変化をPCR法を用いて検討したところ、relaxinはSAH発症3日目より始まり7日目に有意となる発現上昇を認めた。relaxinはその受容体RXFP1を介して血管平滑筋の弛緩に深く関与するが、RXFP1の発現は発症3日後より7日目まで持続する有意な発現低下を認めた。さらに髄液中のrelaxin濃度はSAH発症後漸増し5日目に有意な上昇となり7日目にピークに達した。一方、血中のrelaxin濃度は発症後に有意な発現変化は示さなかった。また、免疫ブロット法によりRXFP1の局在および発現変化を調べたところ、血管平滑筋層を中心に、発症3日目より7日目まで持続する有意な発現低下を認めた。ヒト培養平滑筋細胞を用いて、relaxinにより前処置を行ったものとそうでないものとで、エンドセリン刺激によるミオシン軽鎖(MLC)リン酸化反応の推移を調べたところ、relaxin前処置を行った平滑筋細胞では刺激後の持続相におけるMLCリン酸化反応が有意に低下した。したがって、relaxinは血管平滑筋の持続収縮を抑制的に制御している可能性が示唆された。SAH後のウサギ脳底動脈においては、SAH後にrelaxinの上昇を認める一方でその受容体は持続的に低下し、relaxinの作用自体は減弱していると考えられる。そのため、SAH後のrelaxin受容体の発現低下によりSAH後の平滑筋収縮の持続相の抑制が障害されている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の当初の研究予定内容を一通り終了しており、研究はおおむね順調に進展していると考える。 1)ウサギSAHモデルを用いたSAH後の脳血管におけるrelaxinの経時的発現変動解析 2)relaxinのSAH後の生体内における発現変動解析 3)RXFP1の局在分析および経時的発現変動解析 4)培養平滑筋細胞を用いたrelaxinの平滑筋収縮反応における機能的解析
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り研究は遂行されており、現時点で研究計画の変更の必要性や、研究遂行上の問題点はない。本年度の結果をもとに、次年度は、TIMP1、MMPといったさらなる発現変動分子の発現解析および脳血管の平滑筋収縮性増大機構における機能解析を行い、平滑筋収縮機構におけるこれらの発現変動分子の役割の解明、脳血管攣縮発症に関するバイオマーカーとしての有用性を検討する予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であったTIMP1, TIMP2, MMP9, MMP2などに対するプローブ類や試薬の購入に際し、入荷まで長期間の時間を要したため本年度中の購入ができず、次年度使用額として計上することとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の予定通り、SAH後の血管リモデリングに深く関与していると考えられるTIMP,MMPといった発現変動分子の他、細胞外マトリックスを構成する種々の分子の発現・機能解析を行うため、請求した助成金とともにこれらに使用する予定である。
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