研究課題/領域番号 |
26462170
|
研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
藤岡 政行 奈良県立医科大学, 医学部, 非常勤講師 (20254518)
|
研究分担者 |
三島 健一 福岡大学, 薬学部, 教授 (00320309)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ADAMTS13 / クモ膜下出血 / 脳動脈瘤 / 脳虚血 / 血栓 / 炎症 / VWF / MRI |
研究実績の概要 |
脳動脈瘤破裂によって生じるクモ膜下出血(SAH)は、極めて予後不良の疾患である。この原因には、SAHによる一次的脳損傷と、SAH後の遅発性脳虚血による二次的脳損傷が挙げられる。SAH後、脳血管内皮上で、過剰発現した高活性のフォン・ヴィレブランド因子(VWF)が、血小板と反応して血管内血栓を形成し、また、白血球の血管外遊出を促し組織炎症を助長する。この脳血管微小血栓と脳組織炎症が、遅発性脳虚血傷害の増悪因子となる(Neurosurgery 2013)。ADAMTS13は、VWFを分解し活性を抑え、微小血栓症と脳炎症を抑制し、SAH後の遅発性脳虚血傷害を改善すると期待できる。我々は、脳虚血でADAMTS13が、脳梗塞を縮小することを示した(Blood 2010, Neurol Sci 2012, Brain Res 2015)。本研究では、マウスにSAHを作成し(Br J Neurosurg 2014, Acta Neurochir Suppl 2015)、SAHの程度および脳傷害の経時的変化をMRIと脳組織で評価した(J Clin Neurosci 2016)。SAH後48時間で、脳血管微小血栓が最も形成されるが、同時期のSAHモデルの神経症状と、海馬・大脳皮質の組織学的検証を行った。SAHモデルにADAMTS13を投与すると、遅発性脳虚血傷害が改善された(微小血栓、神経細胞死、神経炎症、神経症状)(J Thromb Haemost 2014, 日本脳神経外科学会学術総会2016年)。ADAMTS13遺伝子欠損マウスでは、虚血後の脳血流低下に加え、血中HMGB1上昇が脳傷害増悪に寄与する可能性がある(Neurol Sci 2012)。我々は、トロンボモジュリンがHMGB1を制御して脳虚血傷害を改善することを確認した(J Neurol Sci 2016)。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在、ADAMTS13遺伝子欠損マウスにSAHを作成し脳標本の解析を行っている。遺伝子欠損動物を用いたSAHモデルを安定的に作成する準備に時間を要した。また、我々は、ADAMTS13遺伝子欠損動物における脳虚血傷害を増悪する因子として、微小血栓と脳炎症に焦点をあてて検証を行っているが、この脳炎症増悪に少なくとも部分的に寄与すると推定されるHMGB1について、さらに脳虚血モデルを作成し、検証を行った。当初の計画を勘案すれば、予定より実験はやや遅れていると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
ADAMTS13遺伝子欠損マウスと野生型マウスのそれぞれにSAHを作成した脳標本を解析し、内因性ADAMTS13が、脳梗塞のみならず、SAH後の遅発性脳虚血に対しても神経保護作用を発揮するか否かについて検証を進めて行く。 また、脳虚血傷害を増悪する因子であるHMGB1を抑制すると推定されるトロンボモジュリンが、HMGB1と直接的に相互反応するのか試験管内での検証を進めたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度は、ADAMTS13遺伝子欠損動物と野生型マウスに作成したSAH脳標本を組織学的に解析し、内因性ADAMTS13がSAH後の脳傷害に対して神経保護的に作動するかについて検証する。また、SAH後の遅発性脳虚血傷害を増悪すると推定されるHMGB1について、その抑制システムを検討する目的で、トロンボモジュリンとHMGB1の相互作用について、試験管レベルで検討する。脳組織、脳標本の解析に必要な経費、in vitroでの実験に必要な器具・試薬に関わる経費、論文作成に必要な経費、学会参加に関わる経費が必要となる。
|
次年度使用額の使用計画 |
病理標本の作成、脳組織・脳標本の検証に必要な経費、in vitro実験に関わる経費、論文作成に関わる経費、学会参加に関わる経費として使用を計画している。
|