研究課題
脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血(SAH)は予後不良である。この原因に、SAHによる一次的脳損傷と、SAH後の遅発性脳虚血による二次的脳損傷が挙げられる。SAH後、脳血管内皮上で発現した高活性のフォン・ヴィレブランド因子(VWF)が、血小板血栓を形成し、また、白血球の血管外遊出を促し組織炎症を助長する。この脳微小血栓と脳組織炎症が遅発性脳虚血傷害の増悪因子となる。我々はADAMTS13がこのVWFを分解し微小血栓と脳炎症を抑制し、脳虚血による脳梗塞を縮小することを示した(Blood 2010,Neurol Sci 2012,Brain Res 2015)。それゆえ、ADAMTS13はSAH後の遅発性脳虚血傷害を改善することが期待された。我々は本研究で、マウスにSAHを作成し(Br J Neurosurg 2014)、SAHの程度および脳傷害の経時的変化をMRIと脳組織で評価した(J Clin Neurosci 2016)。SAH後48時間で脳血管微小血栓形成がピークとなるため、同時期のSAHモデルの神経症状と海馬・大脳皮質の組織学的検証を行った。SAHモデルにADAMTS13を投与すると、遅発性脳虚血傷害が改善された(微小血栓、神経細胞死、神経炎症、神経症状)(J Thromb Haemost 2014)。本研究において、ADAMTS13遺伝子欠損マウスでは、野生型マウスと比較し、SAH後の海馬神経細胞死が増加することが観察された。ADAMTS13はSAH後の遅発性脳虚血を抑制し、SAH患者の予後を改善することが期待できる。我々はトロンボモジュリンが炎症因子HMGB1を制御して脳虚血傷害を改善することを確認しており(J Neurol Sci 2016)、今後の展開ではADAMTS13とトロンボモジュリンの併用によりSAH後の遅発性脳虚血を抑制するのではないかと期待している。
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J Stroke Cerebrovasc Dis
巻: 27 ページ: 758-763
10.1016/j.jstrokecerebrovasdis.2017.10.010
福岡大学産学官連携研究機関 加齢脳科学研究所 2017年度研究成果報告書
巻: - ページ: 印刷中
福岡大学産学官連携研究機関 加齢脳科学研究所 2016年度研究成果報告書
巻: - ページ: 53-61