研究課題
脳血管障害の患者数は現在150万人と言われ毎年25万人以上が新たに発症する。ヒトiPS細胞は特定の条件下では神経組織の再構築能を持つ。我々は既にマヒトiPS細胞から各種の神経細胞を分化誘導する手技を確立し、これらを移植して片麻痺マウスや脊髄損傷マウスの運動機能を改善できる事を報告した。これら神経細胞移植にはいくつかの限界がある。(1)移植後生存細胞が少ないこと(数ヶ月後には1%以下)、(2)移植細胞の神経分化の均一化が困難であること等を発見した。神経分化が高度で均一なほど機能回復は良い (Chiba S et al. J Neurol Sci 2004)。この問題点を解消するため、我々はヒトiPS細胞より現在皮質運動神経細胞シート(特願2012-165108 「神経細胞シート及びその製造方法」発明者:鈴木 登)を作成してその移植を行った。その結果、神経細胞シートを移植する事で注射針で大脳皮質に人為的な損傷を起こすことなく安全に移植が行えること、著明な運動機能改善を認めること、組織学的に層構造類似の状態を再構築出来る事が明らかになった(論文投稿中)。そこで、二次元で成長する神経細胞シートを移植してそこに各種の成長因子を投与する事で更に成長させて、大脳皮質運動野に構造が立体的に類似した神経構造物を得られるか検討を始めた。3次元に再構築された神経組織を作り出すことで、将来的には皮質の高次構造を再構築して、片麻痺などの運動機能障害を高度に機能回復させることを目指す。
2: おおむね順調に進展している
初年度の研究計画は概ね良好に進行している。次年度に期待がもてる状況である。
二次元神経細胞シート移植後にreelinなどの蛋白や神経成長因子を投与して、移植後の脳内での、皮質6層構造の再構築を目指す。
研究計画は概ね順調であり、in vitroで3次元神経組織構造物を作成する予定であったが、実験を遂行する中で、2次元神経細胞シート移植後の脳組織が3次元方向に回復する場合を見出した。そのために実験回数の大幅な減少にも関わらず、当初の目的を果たせる可能性が高くなった。
2次元細胞シート移植によって運動機能が回復する場合には、移植部脳が三次元方向に修復する事があり、この生体の持つ自然修復力をうまく利用する実験系を構築する。そのために各種蛋白を2次元神経細胞シート移植後に投与して、損傷部脳の組織回復を観察する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
International Journal of Ophthalmology and Clinical Research
巻: 2 ページ: 1-5
St. Marianna Medical Journal.
巻: 5 ページ: 59-67