研究課題/領域番号 |
26462172
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
脇坂 季繁 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (80308527)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 片麻痺 / 運動神経 / 皮質運動野 / 一次運動神経 / 3次元組織 |
研究実績の概要 |
脳血管障害の患者数は現在150万人と言われ毎年25万人以上が新たに発症している(厚生労働省推計)。実際、介護が必要な疾患で、第一位は脳血管疾患(21.5%)である(厚生労働省平成22年度国民生活基礎調査報告)。神経組織が再生能を持たないことから、脳血管障害に関わる諸問題を解決する手段として神経細胞移植がきたいされている。欧米では既に臨床研究が始まっているが、本邦においては前臨床研究レベルで解決すべき課題が山積している。 ヒトiPS細胞は特定の条件下では神経組織の再構築能を持つ。重力は個体発生とその組織の維持に重要に関わる事は知られているが、ヒト神経組織の発生・再生に重力が与える影響はほとんど知られていない。2013年9月19日のNature誌にin vitroで3次元構造を持つ神経組織の構築が報告された。 本研究では子宮内での神経組織発生を模擬して重力を応用した形での培養系を構築した。即ち、未分化ヒトiPS細胞を大脳皮質運動神経(一次ニューロン)に分化誘導させた後に通常の重力下に2次元で培養して神経細胞シートを作成した。この神経細胞シートを低~無重力下で培養して、3次元神経組織を形成させて、その解析を開始した。3次元構築された大脳運動野に構造的に類似した神経組織をモデル動物での神経細胞移植に応用することでin vitro・in vivoの神経疾患治療モデルの開発と将来の移植応用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験の全体像は外さずに研究は進展している。一方で、3次元構築された大脳運動野に構造的に類似した神経組織を作成する培養実験の再現性が低い点が問題である。目的として神経組織が形成される場合と形成されない場合がある。
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今後の研究の推進方策 |
大脳皮質運動野の構造に類似した6層をあらかじめ形成させた神経組織をin vitroで作成し、損傷部大脳に移植するという着想を実現させるため、培養実験の条件検討を網羅的に広く検討する。 具体的には、二次元で成長する神経細胞シートを三次元で更に成長させて、大脳皮質運動野に構造が立体的に類似した神経構造物を得ているが、その培養実験の再現性を向上させる必要がある。 このシステムはin vitroでの神経組織発生や疾患脳のモデル系として応用できる可能性を持つのみでなく、さらに将来的には皮質の高次構造を保った神経組織を移植する事で、片麻痺などの運動機能障害を高度に機能回復させることが可能になる重要な実験系であり、ち密な実験の積み上げを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度はin vitroの培養実験を主に行い、その評価法は大部分が肉眼観察や実体顕微鏡下の観察で行った。そのためにRT-PCRや免疫組織染色に必要な試薬の購入が次年度に繰り延べになっている。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、培養で形成された3次元組織を用いて、RT-PCRや免疫組織染色を行うので、次年度に繰り延べられた費用を使用することになる。
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