研究実績の概要 |
今回我々は、高齢者の軽微な頭部外傷後に発生する慢性硬膜下血腫術後において、自然退縮による治癒に至るメカニズムを解明するため本研究を開始した。 まず最初に、術後再発と深く関与していることが既に報告されている炎症性サイトカインであるInterleukin-6やInterleukin-8の術前後における血腫濃度の変化につきELISAにて検討した。結果は、慢性硬膜下血腫を洗浄したかいなかに関わらず術翌日には有意にこれら炎症性サイトカインの増加が認められた。また、Interleukin-6は免疫染色において血管内皮において発現が認められた。すなわち穿頭血腫手術による排液に伴い血腫被膜縮小に伴うshear stressなどが血管内皮に加わり、これらのサイトカインの発現が引き起こされる可能性が強く示唆された。 次に、術中に採取された慢性硬膜下血腫被膜を用いてWestern blotにて、apoptosisと関係が指摘されているCaspase signaling, Autophagy signalingならびにNF-kB signalingについて検討を加えた。NF-kB signalingにおいては、IKKbeta, IKKgamma, IkBalpha, NF-kBならびにphosphorylated NF-kBなどすべての蛋白質の発現が確認された。また、Autopagy signalingにおいては、beclin, Atg3, 7, 12, LC 3A/Bの発現が確認できた。Caspase signalingにおいては、Capase3, Cleaved Caspase-3, PARPなどの発現が確認できた。これらすべて血管内皮やfibroblast において発現が認められた。よって、これらのシグナル伝達系により術後の自然退縮が発生している可能性が示唆された。
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