研究実績の概要 |
高齢者の軽微な頭部外傷後に発生する慢性硬膜下血腫の術後において、被膜が自然消退し治癒に至るメカニズムを解明すべく研究を行ってきた。 今回の研究では、術中に採取された慢性硬膜下血腫被膜を用いてWestern blotを施行し、apoptosisとの関連が強いcaspase signaling pathwayのFas, FADD, TADD, RIP, DEF45, Caspase-3, 7, 8, 9ならびにPARPの発現が確認できた。また、caspase-3, cleaved caspase-3ならびにPARPの発現を免疫組織染色にても検討した結果からは、血腫被膜のfibroblastと血管内皮においてそれぞれの因子の発現が確認できた。 また、apoptosisとの関連性があるautophagyについても検討を加えた結果、mTOR, GβL, ULK1, Beclin-1, Atg 3, 5, 7, 12, 13, 161Lβ,αならびにLC3 A/Bの発現をWestern blotにて確認できた。また、Beclin-1, Atg12, LC3 A/Bの発現は、血腫被膜のfibroblastと血管内皮において確認できた。 apoptosisとautophagyはBcl-2やAtg5を介して、cross talkしていることが報告されている。よって、以上の結果を総合的に検討すると、apoptosisのみならずautophagyも共に関与し、術後の慢性硬膜下血腫の自然消退に深く関与してきていることが解明された。 今後、これらのシグナル伝達系の活性化が、術後の慢性硬膜下血腫の被膜において発現されているのか、更なる検討を要する。また、これらのシグナル伝達系に着目した新たな治療法の確立が待たれるところである。
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