研究課題/領域番号 |
26462180
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
橋本 直哉 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90315945)
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研究分担者 |
坪井 昭博 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座教授 (10372608)
千葉 泰良 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所), その他部局, 脳神経外科・医長 (90533795)
永野 大輔 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (70726520)
高野 浩司 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (90649203)
福屋 章悟 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (50726502)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ALCAM/sALCAM / WT1 / 腫瘍血管新生能 / 腫瘍形成能 |
研究実績の概要 |
ALCAM(Activated leukocyte cell adhesion molecule)とWT1 (Wilms’ Tumor 1)を基軸として、グリオーマ幹細胞/グリオーマ細胞における機能的役割や血管新生との関連を明らかにし、新たな治療法を開発することを目的に、研究計画書に基づき以下の研究を継続し、一定の成果を得た。 A: 悪性グリオーマ幹細胞におけるWT1遺伝子産物の機能的役割の検討:臨床検体における初期培養腫瘍細胞からtumor sphereを作成し、WT1をknock downし、in vitroでの分化能の相違を検討した。また、免疫不全マウスにこれらの細胞を移植した時の腫瘍形成能を検討し、一定の成果を得た。 B: 悪性グリオーマ血管新生におけるWT1とALCAM / sALCAMの機能的役割の解明: In vitroでのtube formation assay、in vivoでの腫瘍血管内皮細胞の検討から、2つの分子は腫瘍血管新生に重要な役割を担っている結果が示された。 C: 悪性グリオーマ幹細胞のperivascular nicheにおけるWT1とALCAMの機能的役割の解明 CD133(+)ALCAM(+)WT1(+)とWT1(-)の腫瘍細胞を、血管内皮細胞と共培養し、tube formationの違いを検討した。WT1も腫瘍血管新生に重要な役割を担うことが判明した。In vivoで、腫瘍細胞を①単独群、②+controlの血管内皮細胞投与群、③+ALCAM knock down血管内皮細胞投与群、④+WT1 knock down血管内皮細胞投与群に分けて免疫不全マウスに投与し、検討を開始した。 D: sALCAMに対するblocking antibodyの作成とその効果の検討:sALCAMに対する抗体の作成を、ハイブリドーマによる抗体精製法を用いて開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A: 悪性グリオーマ幹細胞におけるWT1遺伝子産物の機能的役割の検討、B: 悪性グリオーマ血管新生におけるWT1とALCAM / sALCAMの機能的役割の解明、C: 悪性グリオーマ幹細胞のperivascular nicheにおけるWT1とALCAMの機能的役割の解明、D: sALCAMに対するblocking antibodyの作成とその効果の検討において、あらかじめ予測された一定の成果を得た。sALCAMに対する抗体作成は、やや進捗が遅延気味であるが、今後の方向性は当初の予定通り、変更せずに遂行できると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度までにA: 悪性グリオーマ幹細胞におけるWT1遺伝子産物の機能的役割の検討およびB: 悪性グリオーマ血管新生におけるWT1とALCAM / sALCAMの機能的役割の解明、については一通りの結果を得ている。平成28年度は、引き続き、CとDの実験を継続する。 C: 悪性グリオーマ幹細胞のperivascular nicheにおけるWT1とALCAMの機能的役割の解明:平成27年度に開始したマウス腫瘍モデルにおける腫瘍形成能の解析について、再現実験を行い、WT1とALCAMの腫瘍形成能の差異を明確にする。 D: sALCAMに対するblocking antibodyの作成とその効果の検討:sALCAMの抗体精製を完了させ、それを用いて、matrigel invasion assayおよびラット/マウスの正常脳を使用したbrain slice cultureにて、浸潤能が抗体使用群で変化するか検討する。浸潤能に相違が認められた場合、gelatin zymographyを行いmetalloproteinaseの活性の変化を検討する。In vivoでは、悪性グリオーマ標本から採取した腫瘍細胞や細胞株を免疫不全マウスへ投与する。それぞれの細胞種で投与後抗体使用群とコントロール群にランダムに分け、腫瘍形成及びマウスの生存期間に差が生じるかどうかの検討を行う。形成された腫瘍組織の組織学的検討を行い、腫瘍形成能の差異及び浸潤の抑制、さらには腫瘍血管新生に変化が起こっているかどうかを解析する。形成された腫瘍組織から得た腫瘍細胞のsphere形成能及び各種幹細胞マーカー発現の差異についても検討する。 研究の最終年度であり、AからDで得られた結果を網羅的に比較検討し、必要があれば統計的解析を加えて、英文論文として投稿、発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
A: 悪性グリオーマ幹細胞におけるWT1遺伝子産物の機能的役割の検討、B: 悪性グリオーマ血管新生におけるWT1とALCAM / sALCAMの機能的役割の解明、C: 悪性グリオーマ幹細胞のperivascular nicheにおけるWT1とALCAMの機能的役割の解明、D: sALCAMに対するblocking antibodyの作成とその効果の検討 の4つの研究を同時並行的に進めており、またそれぞれは密接に関連するため、進行状況に若干の差異を認めた。また、これらは平成28年度も継続して行う予定のため、継続性を重視し、若干の残額が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
A, Bはほぼ実験を完了しており、C: 悪性グリオーマ幹細胞のperivascular nicheにおけるWT1とALCAMの機能的役割の解明、D: sALCAMに対するblocking antibodyの作成とその効果の検討についての研究経費として、残額を使用する予定である。
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