研究実績の概要 |
グリオーマ診断におけるIDH変異などのゲノム変化の意義はすでに確立されている。我々はこれらのゲノム変化に加え、膠芽腫治療における遺伝子発現による分類法、特にmesenchymal, proneural phenotype に着目して本年度の研究を行った。まず当院で手術を行った101例の膠芽腫について凍結標本からRNAを抽出し以下の遺伝子の発現をreal time RT-PCR法を用いて正常脳組織をコントロールとして発現量の相対定量を行った。 Mesenchymal markerとしてYKL-40, CD44, Vimentin、RELB, TRADD, PDPを、Proneural markerとしてDLL3, Olig2, BCAN, NCAM1, NKX2.2, ASCL1のそれぞれ6つずつのマーカーを選択し、それぞれの平均値としてMES score, PN scoreを算出した。さらに両者の差であるP-M score (PN score – MES score)を定義した。その結果、P-M score を計算することでマイクロアレイによる分類法を用いなくても、簡便にmesenchymal, proneural な性質を示す膠芽腫を同定することができた。次にこれらの遺伝子発現とエピジェネティックス関連の遺伝子発現との相関を解析したところHDAC7がmesenchymalマーカーとの高い相関を示すことを明らかにした。一方、proneuralマーカーはKDM1A, 2B, 5A, 6B, HDAC4, 5, 9, SIRT1-7など多くの遺伝子発現との相関があり、proneuralな性質を示す膠芽腫はエピジェネティックス制御を受けている可能性が示唆される結果であった。
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