研究課題
近年、次世代シークエンサーにおける遺伝子解析が行われるようになり、これまで見過ごされていた遺伝子変異も発見できるようになった。その中で、グリオーマ研究においてIDH1変異は大変重要な発見であった。全ゲノムシークエンスは膨大なデータが取れるが、多くのサンプル数を解析するにはいまだ高価であり、また、得られる情報量が多すぎて、その解釈が困難な場合がある。そこで、比較的安価に多くの症例を解析するために、多種類の癌種で共通にみられる遺伝子変異に注目した癌パネル(イルミナ)を利用して、がん関連48遺伝子の体細胞変異ホットスポット領域(212領域)に絞ったディープシークエンスを行い、膠芽腫症例の予後、治療反応性、再発などについてレトロスペクティブに解析し、これらの条件に対する遺伝子変異マーカーとして応用を考えている。本研究では少ない症例数から結果を得るために検討症例の条件を絞りディープシークエンスを行った。長期生存例と短期生存例の比較、同一症例で初発時と再発時、再再発時の比較、尾状核部膠芽腫と視床部膠芽腫の比較によりこれまで膠芽腫ではあまり知られていない治療抵抗性や再発に必須の遺伝子変異を発見することを本研究の目的としている。本研究では再発例ではFFPE(パラフィン包埋切片)を用いた悪性度の高い腫瘍組織領域から正確なDNA精製を行い、ディープシークエンスを行った。現在、長期生存例(21症例)と短期生存例(14症例)の比較、同一症例における初発時と再発時の比較(16症例)、尾状核部膠芽腫(7症例)と視床部膠芽腫(12例)のディープシークエンスをすでに終了した。
2: おおむね順調に進展している
93サンプルからDNAを精製し、ディープシークエンスを行い、90サンプルからデータがえられた。3サンプルにおいてはシークエンスデータが得られなかった。長期生存例(21症例)と短期生存例(14症例)の比較、同一症例における初発時と再発時の比較(16症例)を行い、最近話題となっている脳深部に発生する膠芽腫に対する知見を得るために、尾状核部膠芽腫(7症例)と視床部膠芽腫(12例)も検討した。変異はFrameshift変異、Misssense変異、Nonsense変異、Synonymous変異、Silent変異、Noncoding変異 で検討した。同一症例における初発時と再発時比較(16症例)の内訳は、初発時と再発時の比較(14症例)、初発時と再発時、再再発時の比較(2症例)であり、16症例中13症例で再発時に遺伝子変異の蓄積が認められた。今後は変異の出現頻度なども詳細に検討する予定である。
90サンプルのディープシークエンスは終了している。解析ソフトでのフィルトレーション前後での検討や遺伝子変異の種類別(Frameshift変異、Misssense変異、Nonsense変異、Synonymous変異、Silent変異、Noncoding変異)の検討、初発・再発時での変異の増加とそれぞれの変異の出現頻度の変化を解析する。膠芽腫症例の予後予測、治療反応性、再発などについての分子マーカーの発見につなげる。
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