研究課題/領域番号 |
26462188
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
中瀬 裕之 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (10217739)
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研究分担者 |
本山 靖 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (30405386)
松田 良介 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (60453164)
田村 健太郎 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (00423913)
竹島 靖浩 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (60510203)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | glioblastoma / levetiracetam / temozolomide / γδT cell / premature senescence |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「膠芽腫に対する標準化学療法治療であるtemozolomide(TMZ)の抗腫瘍効果を増強する新規併用療法の開発」である。今年度はTMZ感受性増強の基礎的データとして有害事象の少ない併用薬を用いることによるTMZ治療効果への影響を5種類の膠芽腫細胞株において解析した。遺伝子背景の異なる5種類の膠芽腫細胞株 ①T98G, ②U138MG, ③U87MG, ④U251MG および⑤A172 に対して、各濃度のTMZ、p53 を介した O6-MGMT 転写抑制による TMZ の作用増強効果が報告される新規抗痙攣薬のレベチラセタム(LEV)、histone deacetylase (HDAC) 阻害作用による抗腫瘍効果が示されているバルプロ酸ナトリウム(VAL)、免疫応答に関与し、膠芽腫を含む種々の固形癌細胞に対して細胞障害性を示すヒト末梢血由来γδT細胞、抗酸化作用を有するカルニチン(CAR)、レスベラトロール(RES)を単独および併用添加し、抗腫瘍効果の判定および治療感受性に関する遺伝子変異の解析とともに、premature senescence の検出を行った。 実臨床への応用として、治療感受性に関わる遺伝子のgenetic/epigeneticな変異あるいはsenescenceに関わる遺伝子を解析するために、手術摘出標本における遺伝子解析も行った。 結果として、4種の細胞株においてTMZとVPAの負荷で細胞増殖抑制と形態変化がみられたが、LEVの単独負荷に関しては、A172のみ増殖抑制効果がみられたが、他ではLEV単剤では増殖抑制効果はみられなかった。一方、SA-β-galで細胞組織学的に検索した premature senescenceは、いずれの細胞株においてもTMZ単独・併用いずれにおいても premature senescenceの誘導が検出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定した遺伝子背景の異なる6株の膠芽腫細胞のうち5株におけるTMZを単剤投与群と、LEV、VAL、γδT 細胞および CAR、RES 併用群を比較検討し、TMZ の治療効果を増強することができるかどうか、それぞれの併用下における細胞障害、細胞死あるいは premature senescence 誘導の有無など抗腫瘍効果のメカニズムの違いを genotype ごとに解析する。 各併用薬ともに抗腫瘍効果は、単一因子によって規定されるのではなく、それぞれのメカニズムが作用し、抗腫瘍効果が得られることを見出した。更に申請時点での併用薬以外でもビスホスホネートのミノドロン酸(MDA)の直接的な膠芽腫細胞の増殖抑制効果と、γδT 細胞が apoptosis 誘導により、増殖抑制効果を増強することも見出した。 手術摘出標本における療感受性に関わる遺伝子の genetic/epigenetic な変異あるいは senescence に関わる遺伝子解析は、検索し得る腫瘍組織の60%以上で終了しており、凍結保存された残りの症例とともに、今後手術摘出される症例も解析を進める。 また、後療法としてTMZのみを投与された群と、LEV や VAL あるいは他の抗痙攣剤などが併用された群における抗腫瘍効果を後ろ後向きの探索研究として検討するために、臨床データの蓄積と解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
特定の膠芽腫細胞株におけるTMZとの併用薬として有効性が示されたLEV、VAL、δT 細胞、CAR、RES、MDA が、脳内および皮下への細胞株移植免疫不全マウスにおいても同様のメカニズムによって抗腫瘍効果が得られるかどうか検討する。 後ろ後向きの探索研究として検討したOS、PFS、抗痙攣効果などが併用薬の有無、検索した遺伝子変異、premature senescence あるいは mitotic catastrophe 誘導と相関するかどうかを解析し、いかなる因子が臨床的に抗腫瘍効果を増強するかを検索する。 in vivo の実験、後ろ後向きの探索臨床研究で得られた結果に基づき、最もTMZ抗腫瘍増強作用が強く、安全性の高いものを TMZ との併用療法として臨床応用すべく、学内の倫理委員会に申し入れ臨床試験の申請・登録を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
近隣での学会発表が中心であったため、旅費の請求を翌年度に繰り越しました。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の全国学会や、国際学会での発表回数を増やす予定です。
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