研究実績の概要 |
中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)と診断された41症例(男性25例、女性16例、平均年齢62.8歳)を対象に、臨床的検討因子として性別、年齢、Karnofsky performance status(KPS)、病変部位(深部病変、脳弓前半部、中脳被蓋・上髄帆)、病変数、治療法を用い、組織学的検討因子としてmethotrexate (MTX) 代謝関連因子(DHFR, MRP, LRP)、B細胞subtype関連因子(CD10, BCL6等)、細胞周期関連因子(Ki67, p27)、癌遺伝子産物(BCL2, cMYC, pSTAT3)、薬剤耐性因子(MGMT, MMR蛋白)を免疫染色法で評価し、無増悪生存期間 (PFS) 、全生存期間 (OS)を基に予後因子を後方視的に検討した。本研究の結果、以下の知見が得られた。① 従来予後不良とされた深部病変に比べ、脳弓前半部および中脳被蓋・上髄帆病変は限局的で脳室に近く、上衣下浸潤しやすいことからより有意な予後不良因子と考えられた。② mismatch repair (MMR) 蛋白の発現低下はMTX耐性および再発に強く影響し、PCNSLの予後因子であることが初めて示された。③ PCNSLでは全身性diffuse large B cell lymphoma (DLBCL)で予後不良とされるnon-GCB typeの割合は多いが、予後との関連はみられなかった。一方、PCNSLではBCL6発現は予後良好傾向を示し、予後因子である可能性が考えられた。これら研究結果は今後さらに前向き試験にてその意義を検証する予定である。 さらに東京大学医学部間野教授との共同研究により、PCNSLにおける遺伝子異常の全exomeシークエンスによる解析を行った。その結果、全身DLBCLとは異なる頻度で変異が生じていることが明らかとなった。
|