研究課題
われわれは当院で2000年以降にPCNSLと診断され、治療を受けた41症例を対象に、臨床的検討因子及び治療感受性関連因子、癌遺伝子を包括的に解析し、① 病巣の局在が脳弓前半部および中脳被蓋・上髄帆病変で有意に予後不良であること、②ミスマッチ修復(MMR) 蛋白の発現低下がMTX耐性に強く影響し、PCNSLの予後因子であること、③ B細胞分化過程におけるnon-GCB typeの割合は多く、予後良好の傾向はみられたが有意差はなかったこと、④癌遺伝子のcMyc発現は有意な予後不良因子であったことを見いだした。しかし、これらの症例群は治療時期や治療内容が多彩であり、一律な解析は困難であった。今回、最近のPCNSL症例で優れた生存予後が報告されている多剤併用免疫化学療法(R-MPV-A)を施行し、治療を完了した26症例において、分子マーカーを含めた予後解析を実施した。追跡期間中央値21ヶ月で再発は6例、死亡は3例にのみ認めた。PFS/OSともに中央値には未到達。解析可能21例中MYD88変異は14例(67%)に、MGMTメチル化は13例(59%)に認められた。PFSに対して、年齢70歳以上は有意な予後不良因子(p=0.020)であり、MGMTメチル化例では非メチル化例に比べ良好なPFSの傾向がみられた(p=0.140)。R-MPV-Aに含まれるプロカルバジンはMGMTにより効果が減弱される可能性があり、妥当な結果とも考えられる。MYD88変異とMGMTメチル化には相関はみられなかった。引き続きその他の高頻度に認められる異常を含め検討を進めることを計画している。
3: やや遅れている
当科症例を中心とした解析は順調に進んでいる。また、多施設共同で行った全エクソームシークエンスのデータ解析は、新たな進捗がみられた。国内の中枢神経系悪性リンパ腫に対する第III相多施設共同臨床試験の附随研究は、先進医療B制度による試験体制の影響で登録症例数が未だごく僅かであり、標本収集ならびに解析には至っていない点でやや遅れていると判断した。
引き続き標本の収集を進める。また、全エクソームシークエンスで得られた遺伝子異常の意義を解明すべく、実験系での検討を進める。さらに、立ち後れがみられる多施設共同臨床試験での附随研究を軌道に乗せるよう取り組む。
研究計画に沿って実験を遂行し、必要な物品(消耗品等)を購入した。使用予定額よりも標本の使用量がやや少なかったため、残額が生じた。
残高は次年度予算に組み入れ、引き続き計画している研究の遂行のために使用する予定である。
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Acta Neuropathol
巻: publish online 12 Jan 2016 ページ: 未定
10.1007/s00401-016-1536-2