研究課題
前年までの研究を発展し、治療成績が極めて良好なR-MPV-A療法による脳への神経傷害の軽減効果と予後因子解析を遂行した。2012年以降に当科にて治療された初発PCNSL中、R-MPV-A療法を施行し6ヶ月以上経過した32例を対象とした。臨床的及び分子マーカーによる予後解析と、経時的にKPS、MMSE、白質障害(Fazekas scale)を評価した。平均年齢70歳、KPS中央値70、導入R-MPVのCR割合77%、非照射15例(47%)、減量照射12例(38%)。観察期間中央値24.6ヶ月で再発7例(22%)、死亡4例(12.5%)と優れた生存予後を示した。無増悪生存(PFS)に関与する有意な因子(単変量)は、単発(p=0.010)及びMMSE≧24(p=0.025)であった。また年齢(70未満、p=0.059)、MGMTメチル化(p=0.056)で良好な傾向が認められた。一方、KPS、GCBサブタイプ、MYD88変異はPFSに影響しなかった。またmismatch repair(MMR)関連蛋白発現はPFSが長い傾向が認められたものの有意水準には達しなかった。KPSは経過中19例(73%)で改善し、24例で維持・改善を持続。MMSE(評価可能23例)は20/23例(87%)で維持・改善を持続、4点以上の低下は2例(再発時)のみ。Fazekas値は21例(81%)で改善または維持されている。非照射群(13例)では再発した1例以外悪化しなかった。これらの結果から、減量または非照射R-MPV-A療法は高齢者を含めたPCNSLに対し高い有効性と活動性、高次脳機能の改善・維持、および白質障害の抑制効果が認められ、認知機能の維持とMGMTメチル化が予後良好因子として可能性が示唆された。この結果を基に、現在遂行中の多施設共同試験(JCOG1114)の附随研究を推進する予定である。
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Neuro-Oncology (suppl)
巻: 18 ページ: vi6-vi7