研究実績の概要 |
原発性悪性脳腫瘍に対する光線力学的療法(PDT)の更なる治療効果の改善を図るべく、いくつかの実験系を展開した。1)アルキル化剤TMZとの併用効果について:我々はTMZの手術前投与がPDTの有効性を高められる可能性について、in vitroの系で研究を行った。結果として、予想通りTMZの前負荷を与えた方が、その後のPDTによる腫瘍細胞殺細胞効果を高めることを見出した。Miki Y, Akimoto J et al PDPDT 2014; 11(4): 556-564 2)PDTの条件変化による悪性グリオーマ細胞殺細胞増強:薬剤投与量および照射レーザーエネルギー密度を変化させることで、PDTの治療効果を高めるられるかを、ヒトグリオーマ細胞T98Gを用いたin vitroの系で検討した。結果としてtalaporfin sodium 30μg/mL、5 J/cm2での照射が、腫瘍細胞のapoptosis誘導効果が最も高いことを示した。Miki Y, Akimoto J et al: J. Toxicol. Sci. 2014; 39(6): 821-827 3)PDTによるグリオーマ細胞死の機序の詳細解明:In vitroの系において各種細胞死関連因子の発現を検討することにより、PDTによる細胞死機序がprogrammed necroptosisであることを見出した。Miki Y, Akimoto J et al: Lasers Med Sci 2015; 30(6): 1739-1745 4)悪性髄膜腫細胞株に対するPDT効果の検証:我々は悪性髄膜腫cell linesに対するPDT効果を検討した結果、薬剤濃度依存性の細胞死が招来されることを確認した。Akimoto J, Ichikawa M et al: submitted これらの実験系の結果は、talaporfin sodiumを用いたPDTの適応拡大、治療条件の変更、抗癌剤との併用療法の可能性を示唆し、研究目的は達成されたものと判断した。
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