研究課題/領域番号 |
26462193
|
研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
黒岩 敏彦 大阪医科大学, 医学部, 教授 (30178115)
|
研究分担者 |
梶本 宜永 大阪医科大学, 医学部, 教授 (30224413)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 悪性神経膠腫 / 5アミノレブリン酸 / 光線力学診断 / 光線力学療法 / ポルフィリン / 腫瘍可視化 / ABCG2 |
研究実績の概要 |
ラットグリオーマ細胞株F98をFisher ratの脳内に100000個を定位的に移植した脳腫瘍モデルを用いた。腫瘍細胞移植から14日後に5-ALA 125mg/kgを腹腔内投与し、その4時間後に担腫瘍脳を摘出した。摘出脳をスライスし、切断面に405nmの励起光を照射、腫瘍中心、腫瘍辺縁、腫瘍周囲のプロトポルフィリンIXの蛍光輝度(635nm)を分光蛍光輝度計を用いて測定した。ABCG2阻害剤としてのLapatinibは、5-ALA投与の30分前に、300mg/kgを経口投与し、Lapatinib投与群とLapatinibを用いないcontrol群に分けて実験を行った。 1)腫瘍辺縁部の蛍光輝度は、control群が6.7±1.2であるのに対しLapatinib投与群では8.4±2.1に増加した。 2)腫瘍中心部の蛍光輝度は、control群が3.5±0.9であるのに対しLapatinib投与群では4.8±1.2に増加した。 3)腫瘍周囲脳の蛍光輝度は、control群が2.9±0.8であるのに対しLapatinib投与群では2.5±0.9に減少した。
以上の結果から、Lapatinibは腫瘍本体(中心部および辺縁部)のポルフィリン濃度を上昇させるのに対して、腫瘍周囲のポルフィリン濃度を低下させる作用があることが判明した。その機序として、LapatinibのもつABCG2阻害作用により腫瘍細胞内で合成されたプロトポルフィリンIXの細胞外排出が阻害され、周囲脳組織への拡散が抑制されたためと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
lapatinibによる腫瘍組織内のポルフィリン濃度上昇効果が、確認することができた。 しかし、ポルフィリン濃度上昇効果の程度が当初の予測より高くないことも判明した。 今後は、より効果的にABCG2阻害の方法を探る必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
lapatinibによるABCG2合成阻害による光線力学療法の効果増強は、本来腫瘍幹細胞の治療抵抗性を克服するために企画されたものである。 一方、腫瘍幹細胞の光線力学療法に対する治療抵抗性は、高くなくむしろ治療感受性を有する可能性もあることが予備実験から明らかになった。 今後は、この治療感受性とその増強方法についての研究を重点的に行う予定である。
|