研究課題/領域番号 |
26462195
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
泉本 修一 近畿大学, 医学部, 准教授 (40324769)
|
研究分担者 |
友金 祐介 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (10412008)
加藤 天美 近畿大学, 医学部, 教授 (00233776)
奥田 武司 近畿大学, 医学部, 講師 (10340796)
藤田 貢 近畿大学, 医学部, 准教授 (40609997)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 悪性脳腫瘍 / 転移性脳腫瘍 / 免疫治療 / WT1 |
研究実績の概要 |
今までに悪性グリオーマを含めほとんどのすべての固形癌でWT-1 が高発現していることを報告し、WT1癌ワクチン療法の第Ⅰ/Ⅱ相試験を行い十分な安全性と有効性があることを明らかにした。本研究ではラット転移性脳腫瘍モデルおよびヒト脳腫瘍においてWT1ワクチン治療前後の局所での獲得性免疫動態を明らかにし、転移性脳腫瘍における抑制系および促進系免疫機序の解明とWT1ワクチン療法と分子標的療法併用集学的治療の開発を目標としている。初年度から継続してWT1ペプチド療法の動物モデルを研究し以下の研究結果を得た。 Ⅰ:(i)正常ラット、および(ii)担脳腫瘍(Walker 256 carcinoma-由来)ラットを作成した。それらに対して局所獲得免疫細胞を免疫組織学的に同定した。しかしながら、動物モデルWT1ペプチド治療実験は、WT1ペプチドとしてマウスMHC class I 拘束性(H-2Db)ペプチドDb126(a.a.126-134 RMFPNAPYL)(Oka et al. J Immunol, 2000) が明らかになっていることを優先し、マウス担脳腫瘍モデルを作成した。すなわち、マウスとしてC(H-2Db)57BL/6を用い、その種に合うマウス癌細胞3LLおよびB16メラノーマ細胞を用いた。その結果、正常マウス脳に対してそれらの担脳腫瘍マウスでは、ラット・Walker 256 carcinoma移植脳と同じく、限局性であったが免疫担当細胞の集族を明らかにした。またそれらの細胞はWT1を発現していることを確認した。 Ⅱ:ヒトにおいて、WT1ペプチドを皮内投与したのち、局所皮下組織においてCD4およびCD8免疫担当細胞が集族していることを確認した。それらはワクチン治療継続4年後でも維持されており、ワクチン治療は長期治療にも有効であることが確認できた。 今後治療実験を展開する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度から継続してWT1ペプチド療法の動物モデルを研究し以下の研究結果を得た。昨年度から研究責任者の所属が変更し、実験系を再構築する必要があったため時間を要した。ラット脳腫瘍モデルおよびヒト脳腫瘍においてWT1ワクチン治療前後の局所での獲得性免疫動態を明らかにし、転移性脳腫瘍における抑制系および促進系免疫機序の解明とWT1ワクチン療法と分子標的療法併用集学的治療の開発を本研究の目標としている。 Ⅰ:Wisterラットをモデルとして用い、(i)正常ラット、および(ii)担脳腫瘍(Walker 256 carcinoma-由来)ラットを作成した。それらに対して局所獲得免疫細胞を免疫組織学的に同定した。しかしながらWT1ペプチドはMHC class I (H-2Db)ペプチドDb126(a.a.126-134 RMFPNAPYL)(Oka et al. J Immunol, 2000) マウスはC57BL/6(H-2Db)マウス癌細胞 3LLおよびB16melanoma細胞を用いた。 正常マウス脳に対してそれらの担脳腫瘍マウスでは、ラット・Walker 256 carcinoma移植脳と同じく、限局性であったが免疫担当細胞の集族を明らかにした。またそれらの細胞はWT1を発現していることを確認した。 Ⅱ:ヒトにおいて、WT1ペプチドを皮内投与したのち、局所皮下組織においてCD4およびCD8免疫担当細胞が集族していることを確認した。それらはワクチン治療継続4年後でも維持されており、ワクチン治療は長期治療にも有効であることが確認できた。
|
今後の研究の推進方策 |
Ⅰ(1)ラットから変更しC57BL/6マウスを用いて、正常マウスおよびおよび担脳腫瘍(3llおよびB16メラノーマ由来)マウスを作成。それらに対してマウスMHC class I拘束性(H-2Db)ペプチドDb126(a.a.126-134 RMFPNAPYL)を投与し、その免疫反応、組織反応を詳細に検討する。またCD4およびCD8を中心にした免疫担当細胞動態を評価する。(2)ヒトにおいて、WT1ペプチドを皮内投与したのち、局所皮下組織においてCD4およびCD8免疫担当細胞が集族していることを確認した。 Ⅱ 転移性脳腫瘍の外科手術による腫瘍摘出時に再手術した腫瘍組織および辺縁組織の蓄積がある。それらに対し、以下を検討する。a)担癌患者の分子標的療法治療時、CD4およびCD8免疫担当細胞の集族を検討する。腫瘍抗原に対する免疫応答の詳細な解析、WT1テトラマーアッセイによるWT1特異的キラーT細胞の動態解析を行う。今までに検討データの集積がなされている。今までの検討では固形癌患者で治療前すでに血中WT1特異的CTLは量的に増加しており、癌細胞表面のWT1抗原によって体内で感作されていることを証明している。b)そのなかで脳転移が認められた段階で、同様に免疫応答の詳細な解析、同じくWT1特異的キラーT細胞の動態解析を行う。c)転移性脳腫瘍に対し分子標的治療時およびWT1ワクチン治療併用時の免疫担当細胞の動態解析を行う。d)臨床的に免疫変動因子の可能性があるステロイド併用治療時、抗てんかん薬併用治療時の免疫担当細胞の動態解析を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究責任者の所属が変更し、研究体制の再構築があり、研究進行が予定よりも若干遅れ、新たに治療研究目的で使用予定のペプチド作成依頼請求が遅れた。今後新規業者に次年度依頼および請求を行う予定である。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究を通しての予定どおり、WT1CTLエピトープペプチドをラットから変更しマウスおよびヒトで合成し、治療研究に用いる予定にしている。その際初年度使用予定であり、次年度に繰り越したものを使用する必要が生じる
|