研究実績の概要 |
ホウ素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy: BNCT)の治療効果はホウ素化合物の腫瘍細胞内取り込みや正常組織との親和性の違いに影響される。また、この数年の大きな変化として実験用原子炉が停止を余儀なくされ、これに代わり加速器中性子源の開発が急速に進められており、BNCT領域の基礎研究もこの状況に合わせた対応が求められている。
我々はBNCTの治療効果向上を目指すべく、細胞内ホウ素濃度を上昇させる手法としてアミノ酸交換輸送に着目し、System Lによる輸送が活発なCHO-K1細胞を用いてアミノ酸エステル(L-Tyr-Et, L-Phe-Et, L-Met-Et)とホウ素化合物BPAの同時投与が細胞内ホウ素濃度を上昇させることを報告してきた。これまでの実験でアミノ酸エステルとBPAとの最適投与条件を決定し、細胞腫を広げての検証と実際の加速器中性子源を使用した照射実験により、その治療効果を確認する作業を進めている。ロシアの研究所(Budker Institute of Nuclear Physics (Novosibirsk, Russian Federation)と共同し、実際の照射実験を行った。CHO-K1, V79, U251MG 細胞を使用した実験で陽子線エネルギー 2.0 MeV、同電流 1.5-3.0 mA での中性子発生条件で熱外中性子 3x8E cm-2s-1で細胞照射を行いBNCTの効果を確認できた。現在エステルを使用した比較実験を継続している。
|