平成26年から27年にかけての計画では、ノックアウトマウスを使ったloss of function実験を第1に掲げた。FoxJ1CreERT2::R26R-tdTomatoマウスを導入し、floxマウスと交配し、 p73fl/fl::FoxJ1CreERT2::R26R-tdTomatoマウスを作成した。まず、このトリプルトランスジェニックマウスが正しく働いていることを確かめるために、脊髄ではなく、より発現の高い脳室上衣細胞、脈絡叢における免疫染色法による発現を指標として、タモキシフェン投与による、p73の発現の低下を確認した。p73fl/fl::FoxJ1CreERT2マウスにタモキシフェンを投与したところ、上衣細胞層においてp73の発現低下が確認された。また、p73ノックアウトマウスは水頭症を発症することから、シリア維持機能が予想されていた。しかし、p73ノックアウトマウスにおけるシリアをen-face法により可視化したが、予想に反して、tdTomatoの発現が認められるFoxJ1陽性細胞における、p73のノックアウトによっても、シリアや、基底小体の形成には変化が認められず、上衣細胞におけるp73はシリアの維持や、基底小体の形成等を制御しないと言うことが確認された。 次に、脊髄損傷を置き、p73のノックアウトの効果を検討したところ、初期検討においては、p73がないと、より増殖が促され、分化が促進する傾向にあった。このことから、p73は脊髄中心管の上衣細胞の細胞周期を負に制御する可能性が示唆された。
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