研究課題/領域番号 |
26462208
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
押野 悟 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40403050)
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研究分担者 |
貴島 晴彦 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10332743)
三好 智満 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70314309)
中村 元 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80533794)
枝川 光太朗 大阪大学, 医学部附属病院, その他 (40722806)
小林 真紀 大阪大学, 医学部附属病院, その他 (10570575)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | てんかん / 白質 / 電気刺激 / 動物実験 / ペニシリン / 興奮性 |
研究実績の概要 |
本研究は、てんかんで観察される皮質の異常興奮性を白質(脳梁)の電気刺激によって制御できないか、ネコを用いた動物実験で検証するものである。 平成26年度は皮質脳波計測用と脳梁刺激用の電極を作成し、1例目の実験を実施した。実験は概ね計画書通りに進んだが、下記の問題点がみつかり、平成27年度はそれらを修正し、更に2例で実験を実施した。 まず刺激用電極と脳梁との接触が不安定だったことから、脳梁に刺入できる画鋲状の電極とした。更に脳が拍動しても位置がずれないように、電極を支柱で固定するのではなく、柔らかいリード線に接続する形状に変更した。これで脳梁に刺入後も安定して固定できるようになったが、2例目は半球間の癒着により脳梁の露出自体が難しく、3例目は脳梁表面に動脈が走行していたため、予定した部位に刺入できなかった。個体差が大きく、電極を毎回脳梁の同じ位置に刺入するのは難しいと判断したため、今後は脳表の計測範囲を拡げる方針とした。また、刺入部の脳梁線維と脳表との電気的な連絡を確認するため、双方で刺激と記録ができるように接続ケーブルと記録機器を調整した。しかし、2例とも脳梁と皮質間の誘発電位は確認できず、今後の検討課題とした。また3例ともペニシリンの投与でてんかん性異常波は観察されたが、その程度、持続時間には差があった。今後は脳波をモニタリングしながらペニシリンの投与量を調整する必要があると考えた。以上より、まず脳表を広く覆う大型(15 x 20mm)で、薬剤注入孔を複数有する脳表電極が必要となり、現在作成中である。また脳梁を露出すること自体高度な手術技術を要するため、吸引管などの実験器具も改良中である。今年度は前半にこれら改良した電極と器具を用いて6例まで実験を実施し、後半は統計解析を加え、総括する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1例目では脳梁が問題なく露出できたが、2例目以降は半球間裂の剥離などに難渋した。この操作自体の難易度が想定以上に高かった上に、半球間裂面の形状や脳梁表面を走行する血管に個体差があるため、刺激電極の刺入部を一定にすることが難しいことが判明した。 ペニシリン投与によるてんかん性異常波の形態や持続時間の個体差も想定より大きかった。そのため、てんかん性異常波の強度の定量的な指標がまだ検出できていない。更に脳梁刺入電極と脳表電極間の誘発反応がいずれの方向でも確認できなかった。これらの問題に対応するため、現在大型で薬剤注入孔を有する脳表電極に変更し、計測条件も見直す予定である。
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今後の研究の推進方策 |
上記の問題点をもとに、脳表記録電極や実験器具を改良中である。それらが完成したら、4例目以降の実験を再開する。今年度前半で6例まで実施し、後半は収集したデータに統計解析を加え、統括する予定である。。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度は刺激電極と脳表記録用電極を業者に発注する予定であったが、既存の道具、材料を用いて改良することができたので、それらを使用した。そのため、電極代として計上していた費用を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
既に新しい形状の電極は業者に発注しており、まず昨年の繰り越し分を使用する。昨年と同様、実験動物(ネコ)の飼育代、運搬費用、実験に用いる麻酔薬やモニタリングに用いる消耗品に使用する。更に実験器具の更新、データの解析ソフトや解析機器、成果発表と情報収集にも使用する予定である。
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