研究課題
本研究は、てんかんで観察される皮質の異常な興奮性を白質(脳梁)の電気刺激によって制御できないか、ネコを用いた動物実験で検証したものである。平成26・27年度の経験から、実験器具、電極を改良・更新した。まずシート電極は、電極間のシリコン部に薬剤注入孔を複数有する形状にし、大きさも20x15mmと開頭部が広く網羅できるものとした。これにより、ペニシリンを脳表に注入する際、シート電極を移動させる必要がなくなり、モデル作成前後で安定して脳波が記録できるようになった。また、微小吸引管や開頭用ドリルなどの手術器具やモニタリング機器を更新し、開頭から脳梁に到達するまでの手技も安定した。平成28年度は計画通り3匹に実験を実施した。全例脳梁に刺激電極を刺入でき、ペニシリン注入により同側、及び反対側に脳波でてんかん性棘波が観察された。しかし、脳梁の刺激によってそれら異常棘波の頻度や振幅が抑制されるという現象は確認されなかった。一方で、高頻度で刺激すると発作様の律動波が出現したり、1Hzの刺激後に棘波の振幅・頻度が増強したりという興味深い現象が一部の例で観察された。脳梁を走行する線維は主に抑制性の作用を有すると考えられているため、電気刺激により何らかの抑制効果が生じると期待したが、今回の刺激条件では逆に興奮性が増した、もしくは抑制機能が障害されたと考えられる。人工的な白質刺激では生理的な抑制効果は誘発できない可能性も示唆されたが、脳梁(白質)が皮質の興奮性に関与しているという我々の仮設を支持する結果ではある。現在、集積した脳波データを解析中で、有意な所見が得られれば、学会・論文等で公表する予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) 図書 (1件)
Neurol Res
巻: 39(3) ページ: 223-230
10.1080/01616412
J Neurosurg
巻: 125(5) ページ: 1053-1060
10.3171/2015.7.JNS15408
Sci Rep
巻: 6 ページ: 25422
10.1038/srep25422