本研究は、抑制性白質線維の電気刺激で、てんかんにおける皮質の異常興奮性を制御できないかを動物実験で検証したものである。全身麻酔下に、ネコのペニシリン誘発性のてんかん性異常波が脳梁刺激で変化するかを計測したが、明らかな抑制効果は確認されなかった。逆に一部の刺激条件で異常波が増幅する結果が得られた。これらより、脳梁線維が皮質の興奮性に影響するという仮説は実証されたが、人工的な電気刺激では生理的な抑制作用が逆に阻害される可能性が示唆された。今回の貴重な経験から、白質刺激を用いることで、てんかん波が遠隔に伝播するメカニズムを解明できる可能性があると推察し、来年度以降の研究に応用する予定である。
|