研究課題
脊髄損傷(SCI)動物モデルに対し、骨髄間葉系幹細胞(MSC)を移植することで機能回復が得られるという報告が散見される。しかし、多くは急性期モデルを対象とした実験であり、慢性期モデルでの検討は少ない。今回、ラットSCIモデルの慢性期に対しMSCの経静脈的移植を行い、その治療効果、作用メカニズムについて解析を行った。雄SDラットのT9高位の脊髄をIHインパクターで圧挫し、重度SCIモデルを作製した。損傷10週後、無作為にvehicle群、MSC群に分け、前者には培養液のみを、後者にはMSC1000000個を大腿静脈より投与した。行動評価にはBBB scoreを用い、損傷20週後まで行動評価を行った。またGFP-MSCを用いてHoming効果の検討をした。損傷11週後にEvans blue (EvB)を静注し、脊髄組織内への漏出を評価することで、血液脊髄関門(BSCB)の機能を解析した。さらに、組織学的解析を行い、微小血管系・神経線維の修復について検討した。MSC群で、麻痺は移植後翌週から回復が見られ、vehicle群よりも有意に改善した。静注したEvBは脊髄損傷部を中心とした組織内に漏出していたが、MSC群で有意に低量であった。慢性期であってもBSCBの機能は低下していたが、移植後に速やかに安定したことが、早期の回復に寄与していると考えられた。移植した細胞の約5.5%が損傷部へ集積しており、微小血管系の修復や錐体路・錐体外路のsprouting、損傷軸索の再有髄化も、MSC群で有意に高く発現していた。これらが協奏的に働くことで麻痺の回復に貢献していると考えられた。
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Neuroscience
巻: 335 ページ: 221, 231
10.1016/j.neuroscience.2016.08.037