研究課題/領域番号 |
26462219
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
梅村 淳 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00244567)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / 脳深部刺激療法 / 視床下核 / 局所フィールド電位 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は術中にDBS電極より記録した局所フィールド電位(LFP)を解析して術後の至適刺激パラメーター設定に役立てることである。本年度は順天堂大学の病院倫理委員会の承認を受けた後にまずDBS手術中にLFP基礎データの収集に着手した。これまでにデータ収集を行ったのは23症例46側であり、それぞれ安静時および指タップによる運動負荷時に約1分間の記録を行った。収集したLFPデータを適宜解析ソフト(LabChart)を用いてオフラインで周波数解析を行った。その結果、多くの記録で当初予想されたとおり、20-30Hzにピークを持つβ band activityの増加が観察されたが、最初の10例程度は記録ノイズも大きくデータに問題があると思われた。データ収集における至適フィルター設定や機材についてまだ改善の余地があると思われたので、関係技術者からの助言を得て記録ケーブルの改良を行うとともに、記録は0-1, 2-3電極間のバイポーラー記録にとどめた。その後の症例ではノイズの少ない安定した記録が得られたので、当初の計画通り術後の至適パラメーターとの関係について比較検討を行った。いずれの記録においても15-30Hzにピークを持つβ band activityの増加が観察されたが、症例毎にピーク周波数のばらつきが大きく、術後最終的な刺激設定における電極選択との有意な相関関係は得られていない。また、運動負荷におけるピーク周波数変化についても症例毎にばらつきが大きく一定の傾向はまだ得られていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は患者さんの術中データを使用する臨床研究である。まず研究を開始するにあたり、順天堂大学の病院倫理委員会の承認を受ける必要があり、また機器の選定にも時間を要したため実際に術中のデータ収集を行うまでに1年近くの時間を要した。その後もノイズ除去のため記録ケーブルの改良にも時間を要した。さらに実際の測定データの解析においてもデータのばらつきが多く当初の目論見である至適刺激パラメーターとの関連を見いだすことができていない。データのばらつきについては術中のDBSリードからの局所フィールド電位測定に問題があるとも考えられ、測定方法についての再検討を余儀なくされているのが実状であり、これらの理由により研究の達成がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後さらに症例数を増やして検討を行いたいところであるが、これまでの解析結果ではデータのばらつきが大きく、実際の測定データがパーキンソン病の病態を本当に反映しているかどうかに疑問が残る。その理由として、術中のDBSリードからの局所フィールド電位記録ではリードを挿入した途端に微小破壊効果により症状が改善することがしばしばあり、病態が修飾されている可能性がある。微小破壊効果の程度の違いにより症例毎のばらつきがみられたとも考えられる。今後こうした微小破壊効果による変化を排除するために、術中の細胞外電位記録測定のための微小電極記録時に同時に微小電極からLFPを記録して解析する方法を検討中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
局所フィールド電位記録収集解析システムが当初予定していたものより安価なシステムとなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
今後DBSリード挿入に伴う微小破壊効果の影響を排除するために、術中微小電極からの局所フィールド電位記録を計画中であり、そのための追加機材購入および論文執筆にかかる経費に使用予定。
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