研究課題/領域番号 |
26462221
|
研究機関 | 東京医療保健大学 |
研究代表者 |
川合 謙介 東京医療保健大学, 医療保健学部, 教授 (70260924)
|
研究分担者 |
國井 尚人 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80713940)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | single neuron recording / epilepsy / brain / human / electroencephalography / intracranial electrode / intracranial EEG |
研究実績の概要 |
本研究は、微小電極と従来の頭蓋内脳波を同時に計測することで、てんかんに代表される病的脳活動および言語・視覚認知に代表される生理的脳活動をより正確に検出し、病的および生理的脳活動の基盤となる機構を明らかにすることを目的とするものである。 研究実施施設は東京大学医学部附属病院脳神経外科とNTT東日本関東病院脳神経外科である。前者では既に施設内倫理委員会の承認を得ており、本年度に5件の頭蓋内電極留置術を施行し、そのうち3件で、微小電極を同時留置した。後者では、施設内倫理委員会に申請を行い承認を得た。頭蓋内電極留置術はこれまで行われていなかったが、本年度に第一例を施行した。この患者では微小電極の同時留置は行っていないが、体制的に可能であることが確認できた。 これまでに得られた所見は、以下の通りである。 1.微小電極は、海馬など深部構造に留置する深部電極の先端からmicrowire を突出っさせて記録する Behnke-Fried type と、剣山型の深部電極を脳表に刺入すると同時に脳表脳波を記録できる Hybrid type とを開発した。前者よりも後者で安定した単一神経細胞発火を記録できる確率が高かった。前者では留置手技の安定化に伴って記録確率が上昇したが、使用電極の50% を超えず、更なる工夫が必要と考えられた。 2.発作時の同時記録を安定して得ることは、課題負荷時による反応性活動を記録することに比べると困難だったが、1例ではそのような記録が行えた。臨床的および脳波上の発作起始の10分以上前に活動性を変化させる神経細胞が存在すること、発作起始と同時に、発火頻度を上昇させる細胞、低下させる細胞、変化のない細胞などさまざまな活動性変化パターンがあり、てんかん発作は単一神経細胞レベルでは一様な異常興奮とは言えない可能性が示された。 平成27年度は、引き続き電極留置・記録・解析を続けてゆく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要に記したように、2カ所の研究実施施設のうち東京大学医学部附属病院脳神経外科では既に施設内倫理委員会の承認を得ており、本年度に5件の頭蓋内電極留置術を施行し、そのうち3件で、微小電極を同時留置した。発作時および課題負荷時の単一神経細胞活動や近傍の脳波活動の記録は行われており、データが蓄積している。このデータを対象に解析が進行中である。 もう1つの実施施設であるNTT東日本関東病院では、施設内倫理委員会に申請を行い承認を得た。頭蓋内電極留置術はこれまで行われていなかったが、本年度に第一例を施行した。この患者では微小電極の同時留置は行っていないが、体制的に可能であることが確認できた。 また、両施設では週1-2回ペースで合同会議を行っており、研究協力者の人材交流も密接に行っており、相互協力的な研究体制が構築できている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度はさらに症例数を蓄積する。平成26年度と合計で10例を目標とする。 薬剤抵抗性てんかんに対する外科治療を前提とした頭蓋内電極留置術を受ける患者を対象とし、術前検査の結果から、頭蓋内電極留置部位を純粋に臨床的必要性に応じて決定する。微小電極・頭蓋内脳波同時記録用の電極をカスタムメイドに作成する。高精度MRI-3次元画像から、安全な電極刺入部位・刺入経路をシミュレーションし、電極の長さを決定する。頭蓋内電極の留置手術は、東京大学医学部附属病院とNTT東日本関東病院の各脳神経外科で施行する。2~4週間の電極留置中に、てんかん焦点局在診断(iEEG/ECoGの視認による)と脳機能マッピング(通常は電気刺激による)を行い、手術治療適応、治療範囲、治療方法(切除か、海馬多切術/MSTか)を決定する。①長時間記録による発作時活動の捕捉、②言語・視覚認知課題負荷時の2種類の記録を行う。得られた大規模データを専用のワークステーションで解析する。iEEG/ECoG はこれまで通り時間周波数解析を加えてHFOを検出する。多点データについては周波数相関、位相相関の解析も加える。発作起始前後における発作起始部位および非起始部位に留置された微小電極間のLFPおよび発火頻度や焦点局在の空間分布を比較する。また、てんかん焦点領域においてiEEG/ECoGで検出されHFOと微小電極による発火頻度との相関を解析し、病的HFOの発生における単一ニューロン活動の役割を検討する。さらに言語課題、視覚認知課題負荷時の微小電極間のLFPおよび発火頻度を比較し、微小電極における生理的活動賦活指標を検討する。 また、平成27年度には術中の同時記録系を確立することを目標とする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
NTT東日本関東病院での研究進展ややや遅延し、カスタム電極の使用に至らなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
物品費に使用する予定である。
|