研究課題
本研究は、微小電極と従来の頭蓋内脳波を同時に計測することで、てんかんに代表される病的脳活動および言語・視覚認知に代表される生理的脳活動をより正確に検出し、病的および生理的脳活動の基盤となる機構を明らかにすることを目的とするものである。これまでに、てんかん患者の外科治療目的で頭蓋内に電極を留置する際に、カスタムメイドの微小電極・頭蓋内脳波同時記録用のハイブリッド電極を作成、留置し、てんかん発作時や課題負荷時における神経活動の計測を行ってきた。今年度は、顔面運動領域に留置したハイブリッド電極によって記録した、発声に関連した単一ニューロン活動を解析した。電極は微小針電極30極(長さ1.4mm~3.0mm)と円盤状電極2極からなるものである。合計14個のニューロンから活動電位が記録できた。測定された神経活動を特徴量としたデコーディングを sparse logistic regression 解析を用いて施行したところ、従来型の電極を用いた場合よりも高い母音識別精度が得られた。本研究は、病的・生理的な神経活動の解析対象をマクロの脳波レベルからミクロの単一ニューロンレベルまで拡大し解析する点に特徴がある。特にヒトにおける微小電極・頭蓋内脳波の同時記録は、日本では初めてのものである。解析対象をミクロ側に拡大することで、これまで捉えられなかった神経活動が明らかとなり、てんかんの病態や生理的脳活動の基盤への理解をさらに深められる可能性が期待できた。臨床に直結する側面としては、てんかん焦点診断の質や外科治療成績を向上させ、機能マッピングの精度を高める可能性が期待でき、将来的には、埋め込み型のneuromodulation therapyとして、てんかん以外の脳神経疾患の治療や、障害者支援機器としてのブレイン・マシン・インターフェースの開発にも発展する可能性が示唆された。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
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