研究課題/領域番号 |
26462222
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
古瀬 元雅 大阪医科大学, 医学部, 講師 (70340560)
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研究分担者 |
川端 信司 大阪医科大学, 医学部, 講師 (20340549)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | bevacizumab / radiation necrosis / VEGF / meningioma |
研究実績の概要 |
動物実験では、治療実験に向けて基礎となるヒトと同様の病理組織像を呈する遅発性脳放射線壊死モデル動物の開発を行った。 ラットの大脳にX線を単回照射する系でX線のdose escalationを行い、55Gy以上の照射によってラットの白質組織にもヒトの病理組織像を模倣する遅発性の脳放射線壊死が誘導できることを示し、55Gy-65Gyでは約6ヵ月、75Gyでは約4ヵ月、80Gyでは約3ヵ月で壊死病変が生じることが判明した。このうち照射した動物全例(100%)に壊死病変が形成されるのは65Gy以上であり、かつ壊死周囲のグリオーシス層の形成・壊死部および周囲のmicrogliaの増生・拡張した毛細血管の新生と組織内微小出血の多発といったヒトの遅発性脳放射線壊死で共通して見られる病理組織像を最も忠実に再現できるのが65Gy照射であるとの結論に至った。 臨床研究では、ベバシズマブの臨床データのまとめを行った。当初はグリオーマの放射線壊死症例と再発症例のベバシズマブの効果の相違を検討する予定であった。しかし、髄膜腫の方が再発と壊死の鑑別がつきやすく、まずは髄膜腫の症例にてデータを集積した。放射線未照射の悪性髄膜腫にはベバシズマブは全く効果がなかった。放射線照射後の髄膜腫および放射線壊死にはベバシズマブは効果を示しており、未照射髄膜腫と放射線照射後髄膜腫および放射線壊死との間には統計学的に有意な反応の差を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射線壊死の臨床データの収集では、髄膜腫についてまとめることができた。現在論文投稿中である。グリオーマについては今後の課題であるが、まずは髄膜腫について腫瘍と放射線照射後変化との差を見出すことが出来たので、グリオーマ症例についての解析の礎になると考える。
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今後の研究の推進方策 |
遅発性脳放射線壊死モデル動物を用いて、X線照射早期から、遅発性脳放射線壊死が形成されるX線照射6ヵ月後までの個体を経時的にsacrificeする。病理組織学的検討およびこれらの組織から抽出したRNAを用いて病態の経時的推移の伴う組織遺伝子発現レベルの網羅的解析をmicroarrayを用いて実施し、本病態の分子病態学的背景を明らかする予定である。 臨床研究では、今後グリオーマについて腫瘍と放射線壊死の反応性の違いなどを臨床データを収集し、解析する予定である。治療反応の違いから診断に結び付けることが出来るかを検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
ラットを他の実験系より譲り受けることができたため予算に余りが生じた。また、米国脳腫瘍学会に参会し、発表および情報収集する予定であったが、スケジュールが合わないため、参会を断念した。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続きの動物実験を行う予定である。今年度は米国脳腫瘍学会に参会予定である。
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