研究課題
二分脊椎は無脳症、頭蓋脊椎破裂とともに、神経管閉鎖障害(neural tube defects; NTDs)(OMIM #182940)の主要な疾患の1つであり、脊柱管を形成する脊椎骨の先天的な形成不全のために脊髄が脊椎の外に出て、様々な神経障害が見られる。本邦のNTDsの発生頻度は、出生した子供の1万人に対して約6人であるが、病因の多くは不明である。一方、NTDsの疾患モデルマウスの研究により、200個以上の遺伝子の異常がNTDsの発症に関与することが明らかになっている。ヒトにおいても胎生期の神経管の形成に関与する様々な遺伝子の異常が二分脊椎の病因と考えられるが、最近のコホート研究により病因候補遺伝子あるいは危険因子としての遺伝子変異は大部分が不明である。本研究では二分脊椎が見られる疾患の病因遺伝子を同定して臨床像と遺伝子変異の関連を明らかにする。本研究において、重度知的障害が見られる二分脊椎の本症例には2番染色体短腕の重複と5番染色体短腕の欠失が見られた。同様の染色体構造異常の組合せは海外に4症例ありその全症例にNTDsが見られた。また、2番染色体短腕の重複の3例にNTDsが見られることより、本症例の病因は2番染色体の短腕の18.8Mbの染色体重複であることが明らかになった。本症例の2番染色体の短腕の重複は今までに一番短い重複である。本症例の病因を明らかにする目的で、上記200個の遺伝子の中で、この18.8Mbの領域に唯一存在するMSGN1遺伝子に注目し、本遺伝子を過剰に発現するトランスジェニックマウスの作製を開始した。さらに、極めてまれな兄妹例の二分脊椎の症例のエキソーム解析を行った。
2: おおむね順調に進展している
本研究の対象となる重度知的障害が見られる二分脊椎の病因は2番染色体短腕の重複であることを明らかにした。しかし、この領域に含まれる遺伝子の中でどの遺伝子の重複(ゲノム量の増加)が病因であるかは未だ不明であり、これを明らかにするために病因候補遺伝を過剰発現するトランスジェニックマウスの作製を開始した。
1.Msgn1を過剰発現するトランスジェニックマウスの系を確立し、Msgn1遺伝子が病因か否かを明らかにする。2.本症例(重度知的障害が見られる二分脊椎)の研究成果を論文として発表する。3.重症のNTDs症例では2番染色体短腕の重複領域が長い。次にその領域に含まれるNTDsの候補遺伝子のトランスジェニックマウスの作製を開始する。4.エキソーム解析を行った兄妹例の二分脊椎の解析結果を詳細に解析し、遺伝子の異常の有無を明らかにする。
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