研究実績の概要 |
低出力体外衝撃波治療(以下ESWT)は血管増殖作用のみならず神経保護作用も有するとされるVEGFの発現を促進する. 我々は,ラット脊髄損傷モデルでESWTが運動機能を改善することを報告した. 本研究では, ESWTの脊髄損傷後の運動機能と神経障害性疼痛に対する効果を検討し、さらに損傷脊髄内でのVEGFの発現を詳細に検討した. SDラットにNYU impactorを用いてT10高位の胸髄損傷を作製した. 衝撃波照射はStorz Medical 社製DUOLITH SD1を用いて週3回, 3週間行った(0.1mJ/mm2, 4Hz, 400shot/2spot). SCI群(脊髄損傷のみ), SCI-SW群(脊髄損傷後に衝撃波照射)で以下の項目を検討した. 損傷後42日間の運動機能をBBB scoreで,下肢のアロディニアを von Frey test, Hargreaves testで評価した. 損傷後42日目の神経細胞数をNeuN 染色で評価した. 損傷後7日のTUNEL染色で細胞死を評価した. 損傷後7日目のVEGFと各神経系細胞マーカー NeuN, GFAP, Olig2の二重染色で, VEGF発現の局在を調べた. SCI-SW群ではSCI群に比べ, 損傷後28日目以降のBBB scoreが有意に高かった. さらにSCI-SW群でアロディニアが有意に軽減された. 損傷後42日目の神経細胞数はSCI-SW群で有意に多かった. 損傷中心部のTUNEL陽性細胞数は, SCI-SW群で有意に少なかった. 損傷後7日目の VEGF染色ではSCI群に比べSCI-SW群でVEGFの発現が有意に高かった. 二重染色ではNeuN, GFAP, Olig2陽性細胞の全てでVEGFが発現していた. 本研究から, 脊髄損傷に対するESWT によって様々な神経系細胞からVEGFが発現することが明らかになった. またESWTは損傷脊髄内の細胞死を有意に抑制した. ESWTによる広範な神経系細胞からのVEGF発現が神経保護作用をもたらし, 細胞死の抑制や運動機能,神経障害性疼痛の改善につながったと考えられた.
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