研究課題/領域番号 |
26462236
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
高橋 淳 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 講師 (60345741)
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研究分担者 |
羽二生 久夫 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (30252050)
小関 道彦 信州大学, 繊維学部, 准教授 (50334503)
加藤 博之 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (40204490)
二木 俊匡 信州大学, 医学部附属病院, 助教(診療) (80646539) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 思春期特発性側弯症 / 後方矯正固定術 / 有限要素法 |
研究実績の概要 |
本研究では、側弯症矯正手術で椎骨に刺入するスクリューに生じる力学負荷を実験的・解析的に算出し、Skip Pedicle Screw Fixationにおいてskipするスクリューについて定量的な評価基準を確立することを目的としている。平成26年度の検討において、簡易構造で模擬した脊柱模型を用いて行った実験結果の考察をさらに深めることを目的として、平成27年度には以下の実験を行った。(実験1)椎弓根スクリューに生じるひずみから付加荷重ベクトルを求める実験および数値シミュレーション:本実験システムではスクリューに加わる荷重を直接的に計測できないためスクリューに生じるひずみから荷重ベクトルを求めることを計画しているが、これは逆問題であり直接的には解決できない。そこで数値シミュレーション結果に基づき、ひずみ→荷重の変換を行う。本実験において、スクリュー単体での荷重試験を行い、数値シミュレーションの妥当性を確認した。(実験2)スキップ時の椎弓根スクリュー負荷の計測:本研究の目的とするskip状態でのスクリュー負荷について計測したところ、当初予想とは異なりskipすることによりスクリュー負荷が低減する場合があることが明らかとなった。これは、スクリューの拘束箇所の距離がskipにより大きくなることが原因であると推察される。(実験3)椎体形状および椎弓根スクリューの有限要素解析の実施:ヒト椎骨形状を模した解析モデルを構築し、様々な荷重をスクリューに与えた際に椎体の海綿骨や緻密骨に生じる応力状態を見積もった。また、献体から摘出した椎柱のX線CT撮影を実施し、その画像情報の分析および有限要素モデル化を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究が対象とする側弯症矯正手術はそのままでは非常に複雑な生体内の状態を考慮しなければならないことから、複数の段階に分け徐々に複雑化することによって効率的な検討を進めることとしている。具体的には、椎弓根スクリュー単独の力学状態の検討から始まり、簡易形状椎柱模型による検討、ヒト椎骨模型による検討、最終的にヒトに類似した動物の椎骨を用いた検討となる。このことについて本研究計画時には、1年目に基礎的知識の習得、2年目に計算機シミュレーション手法の確立、3年目に人体への適用を目標とした。 2年目に相当する本年度は、1年目に得られた基礎知識の深化および計算機シミュレーションを実施した。すなわち、スクリュー単独での力学状態を確認することにより、計算機シミュレーションにおける荷重条件設定に有用な知見を得た。また、ヒト椎体を模擬した解析モデルを用いた有限要素解析を実施し、骨の応力状態を解析した。さらに、ロッド固定時の椎弓根スクリュー負荷がskipにより低減することは予想していなかった新たな知見であり、実際の患者の矯正手術においてskipする椎骨を選択する際の新しい基準となる可能性がある。これらの検討結果は学術講演会にて発表するに至っている。 以上のことから本年度は、計算機シミュレーション手法を確立するまでには至っていないものの当初予定からは大きく逸脱しておらず、また、実際の手術計画にも活用可能な知見が得られたことから、おおむね順調に進展したと判断する。
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今後の研究の推進方策 |
側弯症矯正手術をロッド回転とロッド固定の2つのフェーズに分け、これまでの検討ではロッド固定に焦点を当てて検討した。最終年度となる平成28年度には次の3つの項目について検討する。第一に、ロッド回転時の椎弓根スクリュー負荷を計測する。この検討においては、椎体模型の初期姿勢が側弯状態となっていることが重要であり、模型の成形方法および力学状態の動的計測方法が解決すべき課題である。第二に、これまでは簡易形状模型を用いた実験を行っていたが、側弯症患者のX線CT画像に基づく患者別椎骨模型を作成し、これまでに開発した実験手技を適用して実際の形状での結果の差異について検討する。椎間関節で接続された椎骨をX線CT画像から適切に分離して模型化する必要があり、そのための画像処理が解決すべき課題である。第三に、これらの実験で得られた知見を総合した応力解析を実施する。解析には、簡易形状模型のモデルおよび患者別モデルを用いる。このとき、患者の生体内では脊椎の周囲組織が結果に影響を及ぼすと考えられるため、これを考慮する必要があると考えている。 また、これらの検討と並行して、動物から摘出した脊椎での実験も実施する。この検討により、これまでの実験結果の妥当性および有用性を確認したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験の実施を計画していたが、椎柱の入手が非常に困難であり実施することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
しかしH27年度末に入手の見込みが得られたため、H28年度前半に実施する計画である。また、上述の通り生体内において椎柱の姿勢を矯正する際には周囲組織の影響も考慮する必要があることから、生体の動力学解析用ソフトウェアを購入する予定である。H28年度請求額と合わせて使用する。
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