研究課題
生体内で安定したケラタン硫酸(KS)分解酵素の安全性を検証するとともに、in vivoではラット脊髄損傷モデル、特に臨床に近い胸髄圧挫損傷モデルを作成して酵素投与を行い、下肢運動機能の回復や感覚機能回復、組織学的検討を行い、その効果とメカニズムを検証した。下肢運動機能、下肢感覚機能回復、酵素投与後に異常痛覚(アロデニア)を生じていないことを検証するため、より客観的な指標である電気生理学的検査も行った。その結果、脊髄圧挫損傷後の運動機能回復はsproutingを含めた軸索伸長効果が確認され、BDAやDiIを用いたトレーサー実験でも、損傷尾側脊髄への有意に多い軸索が観察された。同時にLFB染色の結果などから神経保護作用もみられた。脊髄損傷による下肢麻痺回復後の感覚障害に関してはアロデニアを認めず、感覚神経に関しても神経保護効果が確認された。電気生理学的検討では、下肢の前脛骨筋、腓腹筋のcompound muscle potentialはKS分解酵素投与群で有意に回復し、感覚神経を評価可能なSEPも同様の効果を示した。骨髄幹細胞移植やトレッドミルを用いたリハビリテーションとの併用効果は、損傷後2週からの亜急性期以降に効果がみられた。しかし脊髄損傷後の下肢関節拘縮の個体ではリハビリテーションの統計学的有意な効果がなく、組織学的検討でも損傷部の瘢痕組織が形成され、軸索伸長が阻害されていた。KS分解酵素は脊髄再生においてアロデニアを生じない運動機能回復効果とともに、神経保護や痕抑制効果により、細胞移植やリハビリテーションに適した環境が整えられると考えられ、今後の臨床応用が期待できる。
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Sci Rep.
巻: 11 ページ: 1-12
29323161