要介護の原因に運動器疾患が関与することは明白で、新たな予防戦略への期待は高いが、サルコペニアでは病態メカニズムは不明な点が多く、予防策や治療の確立には至っていない。しかし近年、サルコペニアへの関心は高く、骨格筋を姿勢保持や運動といった人間活動の中心的臓器として、多くの報告がなされるようになった。内科領域でも骨格筋が糖代謝の恒常性を維持する重要な器官として注目され、特に生活習慣病と関連の深いメタボリックシンドローム、なかでも肥満とサルコペニアの関連(sarcobesityと表現される)についての関心は高い。 そこでレプチン遺伝子欠損による過食からの肥満モデル(ob/ob)を用いて、骨格筋の組織学的特徴と筋血流について評価した。その結果からob/obでは骨格筋がの筋湿重量が低下しており、組織学的に筋線維が萎縮し、また筋線維が丸みを帯びた形態であることを見出した。また筋血流はob/obで保たれていたが、大腿動脈を結紮により後肢血流の低下状態では、ob/obの筋再生能が著明に低下していることを示した。さらにob/obの骨格筋において炎症性サイトカインや酸化ストレスマーカーが増大していることから、本邦で2001年より臨床応用されているフリーラジカル除去剤(edaravone)に注目し、in vitroにて骨格筋に対する抗酸化治療を検討し、有意な保護効果を示した。 以上のことから、生活習慣病による慢性炎症がサルコペニアの病態に関与しており、さらには肥満と関連の深いASOなどの末梢血管疾患が更なる酸化ストレスを引き起こし、筋損傷だけでなく、筋損傷後の不十分な再生によりサルコペニアを増悪させる可能性が考えられた。さらに血流障害により引き起こされた酸化ストレスに対する抗フリーラジカル治療がサルコペニアの治療方法の一つになり得ると考えられた。
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