研究課題/領域番号 |
26462240
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
柿木 良介 近畿大学, 医学部, 教授 (20314198)
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研究分担者 |
赤木 將男 近畿大学, 医学部, 教授 (00273441)
松田 秀一 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40294938)
太田 壮一 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70592484)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 末梢神経再生 / 骨髄幹細胞移植 / 血管茎 / チュービング / 同種神経基底膜移植 |
研究実績の概要 |
これまでに我々は、このチューブ内環境に骨髄間葉系幹細胞を移植すれば、細胞はその豊富な血流と神経因子により、神経系細胞に分化、増殖し、神経再生を促進させる事を報告した(T. Yamakawa et al. Cell transplant 2007)。本実験では、我々は移植細胞がチューブ内で滞在するための足場として、同種神経基底膜を神経チューブ内に移植する事により、より末梢神経再生が促進されるのでは無いかという仮説を立て、この実験を行っている。 同種神経基底膜としては、DA ratより採取した坐骨神経にfreeze and throwを繰り返す事により細胞成分を除去した同種神経基底膜を作成した。Lewis ratの坐骨神経に作成された20mmの神経欠損を、腓腹動静脈茎と骨髄間葉系幹細胞(BMSC)移植した同種神経基底膜を含有したシリコンチューブで架橋した群(VCS群)、コントロールとして同種神経基底膜の入ってない骨髄幹細胞移植血管含有チューブで架橋した群(VC群)をそれぞれ20頭作成し、その神経再生を、術後12週に電気生理学的、組織形態学的に各群10頭ずつに対して評価を行ったその結果VCS群、VC群の運動神経伝導速度は、対側正常肢のそれぞれ50.3±16.7%、38.3±23.8%で、両群間に有為さはなかったが、母趾内転筋のM波の振幅は、それぞれ対側正常肢の10.1±6.4%, 3.6±2.5%で有為にVCS群の振幅が大きかった。また神経チューブ遠位部より採取した再生神経横断面での形態学的検索では、VCS群、VC群の平均有髄神経軸索総数は、それぞれ3370±1253, 852±435、平均有髄神経軸索直径は、それぞれ3.47±0.37μ, 2.89±0.36μで、平均有髄神経軸索総数、平均有髄神経軸索直径とも有為にVCS群が優れていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに我々は、このチューブ内環境に骨髄間葉系幹細胞を移植すれば、細胞はその豊富な血流と神経因子により、神経系細胞に分化、増殖し、神経再生を促進させる事を報告した(T. Yamakawa et al. Cell transplant 2007)。本実験では、移植細胞がチューブ内で滞在するための足場として、同種神経基底膜を神経チューブ内に移植する事により、より末梢神経再生が促進されるのでは無いかという仮説を立てた。 同種神経基底膜としては、DA ratより採取した坐骨神経にfreeze and throwを繰り返す事により細胞成分を除去して作成した。Lewis ratの坐骨神経に作成された20mmの神経欠損を、腓腹動静脈茎と骨髄間葉系幹細胞(BMSC)移植した同種神経基底膜を含有したシリコンチューブで架橋した群(VCS群)、コントロールとして同種神経基底膜の入ってない骨髄幹細胞移植血管含有チューブで架橋した群(VC群)を作成した。術後12週、24週ともに、足底内転筋での複合筋活動電位の振幅、再生神経最遠位部での有髄神経数,有髄神経直径、髄鞘幅,前脛骨筋湿重量の全てのパラメーターで、VCS群の方がVC群に有為に勝っていた(p<0.05)。GFP Lewis ratより採取したBMSCを普通のLewis ratの神経チューブ内に移植し、再生神経切片をS100, GFAPで免疫染色をおこなったところ、GFPの信号とmergeする細胞が存在し、神経チューブ内に移植したBMSCが、Schwann細胞様に分化していた。CD8a monoclonal antibodyを用いて免疫染色では、VCS群の再生神経片と自家神経移植片との間で染色性に差はなく、移植された同種神経移植片に拒絶反応が起こっていない事を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
1. 同種神経基底膜の細胞外マトリックスの存在に対する検索:我々が作成した同種神経基底膜にextra cellular componentであるlaminineが残存しているか抗laminine抗体を用いて検索する。 2. 同種神経基底膜の血行化についての検索:本実験では、20mmの坐骨神経欠損を架橋しており、長い神経チューブ中央部では、虚血になることが予想される。虚血状態では、移植したBMSCも死滅する可能性があるため、本実験では腓腹動静脈の血管茎をチューブ内に挿入している。実際に挿入した血管茎よりその側に移植された同種神経基底膜が血行化されているかを、anti-rat endothelial cell cytoplasmic antigen (RECA-1) antibodyを用いた免疫染色を行い検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
S100, GFAPで免疫染色に関しては、抗体は、教室内にあった為研究費を使わずに済んだ。今後同種神経基底膜の細胞外マトリックスの存在に対する検索と同種神経基底膜の血行化についての検索をおこなうが、抗体等の購入に資金がいるうえ、何度も条件調整の必要が有るため、研究費が必要となる。 これらの結果が出た後、英語論文にして公表するが、外国語の校正等に資金が必要になると考える。
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次年度使用額の使用計画 |
今後同種神経基底膜の細胞外マトリックスの存在に対する検索と同種神経基底膜の血行化についての検索をおこなう。これらの結果が出た後、英語論文にして公表する予定である。
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