研究課題
【目的】加齢に伴う姿勢変化(主として前傾姿勢)は腰痛ならびにQOL低下の原因となることが指摘されている。しかし、日本人における疫学指標や症状との関連、姿勢変化の原因については不明の点が多い。本研究では一般住民を対象に全脊柱MRI、全脊柱立位側面像、腰痛・QOLに関するアンケート調査を主軸とする運動器検診を実施し、前述の不明点を明らかにすることを目的とした。【方法】和歌山県T町で2013年に実施されたROAD第3次検診への参加者952名のうち、全脊柱矢状面X-P像と腰椎MRI横断像で筋群の評価が可能であったもの794名(男性239名、女性555名、平均年齢63.6±13.1歳)を対象とした。画像計測を半自動的に行うためのソフトウェアを開発し、全脊柱矢状面単純X線像にてC7 sagittal vertical axis (C7 SVA、単位mm)、L1椎体上位終板レベルの傍脊柱筋(横突棘筋と脊柱起立筋)とL5椎体上位終板レベルの傍脊柱筋と腸腰筋(大腰筋と小腰筋)について、横断面積(mm2)と脂肪変性領域(%)を測定した。【結果】C7 SVAは男女とも年代の上昇と共に有意に増加していた。脊柱周囲筋群の左右平均横断面積は男女とも年代の上昇と共に有意に減少していたが、減少度は男性の方が大きかった。脂肪変性は腸腰筋よりも傍脊柱筋で有意に顕著であった。傍脊柱筋横断面の脂肪変性領域は男女とも年代の上昇と共に有意に増加していた。重回帰モデル検討の結果、L1後筋の脂肪変性領域(の増大)が腰痛の有病(単位オッズ比1.06)とVAS値の増加(標準偏回帰係数0.13)に有意に関連していることが判明した。また、L1レベルでの傍脊柱筋脂肪変性領域の増加がC7SVAの増加に有意に関連していた。偏回帰係数は2.45、標準偏回帰係数は0.27であった。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度中に予定されていた画像計測が終了し、研究成果を国内外の学会で発表予定である。
今後、同じコホートでの追跡調査結果や姿勢異常に対する手術患者データを含めた解析を行うことによりサルコペニア、姿勢悪化あるいは腰痛との関連、病的所見の閾値の設定、脊柱筋変性の危険因子の解明が可能になるものと考える。
1.コホートの追跡調査が平成26年度には行われず、平成27年度と28年度の2年間に実施されることが決定した。2.画像計測ソフトの開発費用が予想よりも少なく済んだ。
平成27年度は海外発表3件が決定されている。また、コホート(追跡)調査を実施することが決定されている。これらの旅費に繰り越し分を使用する予定である。
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Spine J
巻: 15 ページ: 622-628
10.1016/j.spinee.2014.11.012.
巻: 14 ページ: 2811-2817
10.1016/j.spinee.2014.03.051.