サルコペニアと脊椎アライメント変化に着目した運動機能低下診断・予測ツールの開発

2015 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 26462249
• 研究機関: 和歌山県立医科大学
• 研究代表者: 橋爪 洋 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (10326382)
• 研究分担者: 岡 敬之 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (60401064)
• 研究期間 (年度): 2014-04-01 – 2017-03-31
• キーワード: spinal alignment / paravertebral muscle / low back pain / sarcopenia / vertebral fracture

研究実績の概要

【目的】加齢に伴う立位姿勢の前傾化（矢状面アライメント不良）は、高齢者のADL/QOL低下の原因となり得る。これには椎間板変性、骨粗鬆症性椎体骨折、傍脊柱筋変性などが関与するものと考えられるが、高齢者ではこれらが複数存在しているため、その影響度合いが不明である。本年度は平成26年度の研究成果をさらに発展させ、一般住民の脊柱画像所見を詳細に検討し、加齢に伴う矢状面アライメント不良の要因を明らかにすることを目的とした。
【方法】和歌山県T町で2013年に実施されたROAD第3次検診参加者952名のうち、全脊柱のMRIと立位単純X線側面像の評価が可能であったもの794名(男性239名、女性555名、平均年齢63.6±13.1歳)を対象とした。立位単純X線側面像にて1)C7 Sagittal Vertical Axis (C7 SVA)、Pelvic Incidence (PI)、Pelvic Tilt (PT)を計測した。また、MRI上胸腰椎の1)椎間板変性（Pfirrmann分類 Grade1-5）、2)形態的椎体骨折（SQ法 Grade0-3）、3)硬膜管横断面積(mm2)、4)傍脊柱筋（PVM）脂肪変性（L1上位終板高位横断面脂肪変性領域%）を評価した。腰椎椎間板Phirrmann gradeの総和を lumbar DD index (範囲5-25)、T1-L5椎体のSQ gradeの総和をMorphometric Fracture Index (MHI:範囲0-51)とした。統計解析は矢状面アライメント不良（C7 SVA 50mm以上と定義）の有無を目的変数、その他の測定評価項目（2値化したもの）を説明変数とする多重ロジスティックモデルを作成した（有意水準p＜0.05）。
【結果】矢状面アライメント不良ありのものは98名(12%)であり、うち53名（55%）が過去1ヶ月以内に腰痛を有していた。有意に関連する因子は1)年齢（70歳以上、オッズ比2.48[95%CI:1.33-4.69]）、2）PT（18.7度以上、3.12[1.77-5.63]）、3）椎体骨折（T1-L5椎体のSQ gradeの総和が4以上、2.01[1.15-3.51]）、4)PVM脂肪変性（10.6%以上、4.98[2.74-9.27]）であった。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1．平成27年度中に予定されていた多面的な画像評価が終了し、高齢者の姿勢悪化に関連する傍脊柱筋変性の重要性が確認された。
2．傍脊柱筋の脂肪変性が10.6%を超えると姿勢が悪化する可能性が明らかとなった。
3．平成27年度は和歌山県日高川町における住民コホート（約800名）の追跡調査が無事に完了した。

今後の研究の推進方策

1．平成28年度は和歌山県太地町における住民コホート（約800名）の追跡調査を行う予定である。
2．これまでの研究成果を国内外の学会で発表すると共に医学雑誌への投稿を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額166,988は2016年5月16－20日にシンガポールで開催される国際学会（発表予定あり）への旅費として、残したものである。

次年度使用額の使用計画

2016年度は和歌山県太地町においてコホート追跡調査を行うと共に、研究成果を国内外にて発表することで全額使用する見込みである。

研究成果

• [国際共同研究] The University of Hong Kong(Hong Kong)
  • 国名: その他の国・地域
  • 外国機関名: The University of Hong Kong
• [雑誌論文] Metabolic Syndrome Components Are Associated with Intervertebral Disc Degeneration: The Wakayama Spine Study. (2016)
  • 著者名/発表者名: Teraguchi M, Yoshimura N, Hashizume H, Muraki S, Yamada H, Oka H, Minamide A, Ishimoto Y, Nagata K, Kagotani R, Tanaka S, Kawaguchi H, Nakamura K, Akune T, Yoshida M.
  • 雑誌名: PLoS One 巻: 11 ページ: e0147565
  • DOI: 10.1371/journal.pone.0147565
  • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
• [雑誌論文] Radiographic natural course of lumbar degenerative spondylolisthesis and its risk factors related to the progression and onset in a 15-year community-based cohort study: the Miyama study. (2016)
  • 著者名/発表者名: Enyo Y, Yoshimura N, Yamada H, Hashizume H, Yoshida M.
  • 雑誌名: J Orthop Sci. 巻: 20 ページ: 978-84
  • DOI: 10.1007/s00776-015-0759-8
  • 査読あり
• [雑誌論文] Physical Performance Measures Associated With Locomotive Syndrome in Middle-Aged and Older Japanese Women. (2016)
  • 著者名/発表者名: Nakamura M, Hashizume H, Oka H, Okada M, Takakura R, Hisari A, Yoshida M, Utsunomiya H.
  • 雑誌名: J Geriatr Phys Ther. 巻: 38 ページ: 202-7
  • DOI: 10.1519/JPT.0000000000000033
  • 査読あり
• [学会発表] Aging change of the paravertebral muscles and psoas muscles of the lumbar spine and relation to the low back pain in a general population -The Wakayama Spine Study. (2016)
  • 著者名/発表者名: Hiroshi Hashizume, Hiroshi Yamada, Hiroyuki Oka, Masatoshi Teraguchi, Hiroki Iwahashi, Takahide Sasaki, Kazunori Shinto, Shigeyuki Muraki, Ko Matsudaira, Akihito Minamide, Yukihiro Nakagawa, Noriko Yoshimura and Munehito Yoshida.
  • 学会等名: Asia Pacific Spine Society at Spine Week 2016
  • 発表場所: シンガポール
  • 年月日: 2016-05-16 – 2016-05-20
  • 国際学会
• [学会発表] Paravertebral muscle degeneration is the most significant factor associated with sagittal imbalance: The Wakayama Spine Study. (2016)
  • 著者名/発表者名: Hiroshi Hashizume, Noriko Yoshimura, Hiroshi Yamada, Hiroyuki Oka, Masatoshi Teraguchi, Hiroki Iwahashi, Yoshiki Asai, Takahide sasaki, Shigeyuki Muraki, Ko Matsudaira, Shunji Tsutsui, Akihito Minamide, Yukihiro Nakagawa, Hiroshi Iwasaki, Munehito Yoshida.
  • 学会等名: The International Society for the Study of the Lumbar Spine at Spine Week 2016
  • 発表場所: シンガポール
  • 年月日: 2016-05-16 – 2016-05-20
  • 国際学会
• [学会発表] Diabetes mellitus is a significant risk factor for lumbar disc degeneration in a longitudinal population - based cohort: The Wakayama Spine Study. (2016)
  • 著者名/発表者名: Masatoshi Teraguchi, Hiroshi Hashizume, Noriko Yoshimura, Shigeyuki Muraki, Hiroshi Yamada, Hiroyuki Oka, Akihito Minamide, Keiji Nagata, Yuyu Ishimoto, Ryohei Kagotani, Munehito Yoshida.
  • 学会等名: The International Society for the Study of the Lumbar Spine at Spine Week 2016
  • 発表場所: シンガポール
  • 年月日: 2016-05-16 – 2016-05-20
  • 国際学会
• [学会発表] The association between the cross-sectional area of the dural sac and low back pain in a large population: The Wakayama Spine Study. (2016)
  • 著者名/発表者名: Hiroki Iwahashi, Noriko Yoshimura, Hiroshi Hashizume, Hiroshi Yamada, Hiroyuki Oka, Munehito Yoshida.
  • 学会等名: The International Society for the Study of the Lumbar Spine at Spine Week 2016
  • 発表場所: シンガポール
  • 年月日: 2016-05-16 – 2016-05-20
  • 国際学会
• [学会発表] Novel classification and risk factors of high intensity zone of the lumbar spine: The Wakayama spine study. (2016)
  • 著者名/発表者名: Masatoshi Teraguchi, Dino Samartzis, Hiroshi Hashizume, Hiroshi Yamada, Shigeyuki Muraki, Hiroyuki Oka, Jason PY Cheung, Noriko Yoshimura, Kenneth MC Cheung, Munehito Yoshida.
  • 学会等名: The International Society for the Study of the Lumbar Spine at Spine Week 2016
  • 発表場所: シンガポール
  • 年月日: 2016-05-16 – 2016-05-20
  • 国際学会
• [学会発表] シンポジウム1「非特異的腰痛の基礎と臨床」腰椎単純MRI上の加齢変性所見は腰痛の原因か？：The Wakayama Spine Study. (2016)
  • 著者名/発表者名: 橋爪洋、吉村典子、山田宏、岡敬之、寺口真年、岩橋弘樹、佐々木貴英、村木重之、松平 浩、阿久根徹、川口浩、中村耕三、南出晃人、中川幸洋、吉田宗人．
  • 学会等名: 第45回日本脊椎脊髄病学会学術集会
  • 発表場所: 幕張
  • 年月日: 2016-04-14 – 2016-04-16
• [学会発表] シンポジウム3「脊椎矢状面アライメントの異常とその矯正」傍脊柱筋変性は脊柱バランス不良の最大関連要因である：The Wakayama Spine Study. (2016)
  • 著者名/発表者名: 橋爪洋、吉村典子、山田宏、岡敬之、寺口真年、岩橋弘樹、浅井宣樹、佐々木貴英、村木重之、松平 浩、籠谷良平、筒井俊二、岩﨑 博、南出晃人、中川幸洋、吉田宗人．
  • 学会等名: 第45回日本脊椎脊髄病学会学術集会
  • 発表場所: 幕張
  • 年月日: 2016-04-14 – 2016-04-16
• [学会発表] 腰椎単純MRIは腰痛の原因をどこまで説明可能か？：The Wakayama Spine Study． (2015)
  • 著者名/発表者名: 橋爪洋、吉村典子、山田宏、岡敬之、寺口真年、岩橋弘樹、佐々木貴英、村木重之、阿久根徹、川口浩、中村耕三、南出晃人、中川幸洋、田中栄、吉田宗人.
  • 学会等名: 第23回日本腰痛学会
  • 発表場所: 東京
  • 年月日: 2015-11-14 – 2015-11-15
  • 招待講演
• [学会発表] 脊椎加変性疾患の疫学指標ならびに運動機能との関連 ：The Wakayama Spine Study． (2015)
  • 著者名/発表者名: 橋爪洋、吉村典子、山田宏、吉田宗人．
  • 学会等名: 第70回日本体力医学会
  • 発表場所: 和歌山
  • 年月日: 2015-09-18 – 2015-09-20
  • 招待講演