研究課題/領域番号 |
26462250
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
高平 尚伸 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (70236347)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 静脈血栓塞栓症 / 深部静脈血栓症 / 肺血栓塞栓症 / 理学的予防法 / 薬物的予防法 / 携帯型間欠的空気圧迫装置 / 下肢の不動肢位 / 被災地 |
研究実績の概要 |
静脈血栓塞栓症(VTE)は下肢の静脈内に生じた静脈の血栓(深部静脈血栓症:DVT)が遊離し,血管内を通って肺動脈を塞ぐこと(肺血栓塞栓症:PTE)で死に至る連続した病態である. 深部静脈血栓症は,エコノミークラス症候群やロングフライト症候群などの名称として社会的に広く知られており,近年では中越沖地震(平成19年),東日本大震災(平成23年),熊本地震(平成28年)での震災時における被災地での避難場所による不動状態,それに続発する転倒や骨折,安静という血栓症発生への悪循環も指摘されている.また,VTEは整形外科を始めとする外科領域においても緊急を要する重篤な合併症の一つである.一方、VTEは国内外において予防ガイドラインは散見される。しかし、薬剤や器具を用いない理学的予防法による効果的な方法については科学的エビデンスが乏しく,高リスクに対して国内外のガイドラインでは携帯型間欠的空気圧迫装置を用いる方法しか推奨されていない. 本研究では,これまで申請者らが行ってきた骨折患者におけるVTEの発生と予防に関する調査検討に基づいて,下肢の不動肢位によるVTE発生問題を解決するために,薬剤や器具を用いない最適な理学的予防法を開発し,臨床応用へと展開するための研究基盤を確立する.これにより,被災地も含めた薬剤や器具の用意ができない施設や病院での最良のVTE予防法を提供するエビデンスを構築し,わが国全体でのVTE発生率の低下,さらに死亡率の低下の一端に寄与できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
静脈血栓塞栓症(VTE)の新たな理学的予防法として,薬剤や器具を用いない足関節自動運動と呼吸の併用法を考案し,適正な強度や回数を調査と検証し,独自の簡便かつ有効性の高い予防法の確立を目指した.本実験系において,対照として従来型の間欠的空気圧迫装置(逐次型空気圧式マッサージ器ハドマー330C,黒田精工社)および米国のVTE ガイドラインで唯一推奨されている携帯型間欠的空気圧迫装置:Wiz Air DVT+S.F.T(HARADA.Inc)を用いて検証を行った.その結果,本併用法は下肢深部静脈血流停滞を改善させ,器具を用いた下肢深部静脈血流改善効果と非劣性であることが示された(Tsuda K, 2015).本法は,薬剤や器具を用いない安全かつ有効なVTEの新たな理学的予防法として期待できることが示唆され,新たな予防法の確立の一端に繋がった.
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今後の研究の推進方策 |
被災地も含めた予防薬剤や器具の用意がない施設や病院での最良かつ最適なVTE理学的予防法を提供するためのエビデンスの構築の一端を担うことができた.今後は,新たな電源を不要とするVTE予防の装置や弾性ストッキングの特許出願も行ったことから,それらの実証実験を行いながら,生体が本来有している生理的な静脈還流のメカニズムである筋ポンプ,呼吸ポンプ,姿勢などの因子を効果的に活用させて,さらなる実用化に向けたエビデンスの構築に努めたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度には主に被験者への謝礼は,学内のポスターで募集したボランティアが必要数に達した.また,国内および国外発表を行って研究成果報告を行った.一方,研究の進行は順調に進んだため,印刷,通信,会議費の支出はなかった.したがって,約129,007円の次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度には主に研究成果の報告および英文雑誌への投稿が主体となることが予測される.そのため,英文校正代,論文掲載料,研究成果広報用パンフレット作成代,報告書作成費が必要になる.さらに、最新の機能を備えたPCを購入する必要があり得る.その理由は,予定していたデータの情報処理やビデオ分析が始まり,ビデオ分析等においては情報容量も大きく,また,収集したデータの個人情報保護のためにも,ネットワークにつながない大容量のPCが必要になり得る.
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