昨年度の解析からTNFα刺激によりCOX-2(-1432/+59) reporterの転写活性は上昇したにもかかわらずNFκβの binding siteが欠失したCOX-2 (-220/+59) reporterではTNFα刺激による発現が誘導されなかった。またNFκβやCOX-2のinhibitor (MG132やCelecoxib)を用いた発現解析の結果から、椎間板細胞におけるTNFαによるWntシグナルの活性化はNFκβシグナルによる直接的作用とCOX-2/PGE2シグナルを介した間接的作用がそれぞれシグナル調整に関与している可能性が示唆された。 平成28年度は、引き続きPGE2によるWntシグナルの発現について解析をおこなった。その結果PGE2刺激によりWnt関連遺伝子の発現は上昇した。 この過程においてはgain-of-functionやloss-of-functionによる検討から、椎間板細胞におけるEP受容体のうちEP3の関与が示唆された。 平成26年度から28年度にかけ椎間板変性におけるWntシグナルとアラキドン酸カスケードについての分子学的解析をおこなったが、これらのシグナルは炎症誘導に関与する重要な転写シグナルであり、椎間板細胞におけるWntシグナルの分子スイッチとして働く可能性が考えられた。今後はTNFα-PGE2シグナルによるWntシグナルの活性化をレセプター部位で抑制できれば、椎間板変性における新たな分子標的治療薬に繋がる可能性が考えられた。
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