研究課題/領域番号 |
26462253
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研究機関 | 関西医療大学 |
研究代表者 |
谷口 亘 関西医療大学, 保健医療学部, 准教授 (20453194)
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研究分担者 |
中塚 映政 関西医療大学, 保健医療学部, 客員教授 (30380752)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 前帯状皮質 / ACC / in vivo パッチクランプ法 / 下行性疼痛賦活 / EPSC / spinal cord / dorsal horn / 前帯状回 |
研究実績の概要 |
情動中枢の一つである前帯状皮質(Anterior cingulate cortex : ACC)の活性化が脊髄後角細胞のシグナル伝達にどのような作用を与えるのか、電気生理学的に解析を行った。前もってACCの定点(座標:bregmaから2.0mm前方、0.5mm側方、2.0mm腹側)に刺激電極を設置し、脊髄膠様質ニューロンにおける興奮性シナプス後電流(EPSC)および抑制性シナプス後電流(IPSC)の変化をin vivo パッチクランプ法を用いて解析した。ACCの単回の電気刺激ではEPSC,IPSCともに明らかな変化は認めなかった。そこで100μs, 100Hz, 100μAの強度で1秒間の刺激を150秒間に渡って5秒毎に繰り返すtetanic刺激を行ったところ、EPSCの頻度・振幅がそれぞれ126%、120%程度に増強される効果を認めた(n=12)。一方、IPSCは同様のtetanic刺激でも有意な変化は認めなかった(n=7)。次に神経障害性疼痛モデルとしてSpared Nerve Injury (SNI) モデルラットに対して、ACCへ同様のtetanic電気刺激が脊髄膠様質ニューロンのEPSCにどのような影響を与えるか解析した。 SNI モデルラットにおける自発性EPSCは正常ラットより、その頻度・振幅が亢進していたが、ACCへの電気刺激により増強されることは無かった。以上のことから、情動中枢のACCの活性化はより下位中枢である脊髄後角において、疼痛のシグナル伝達を増強させる効果があることが示唆された。さらに神経障害性疼痛では効果は得られなかったことから、既にACCの活性化が自発性EPSCの増強に関与している可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、 ACCの電気刺激による脊髄後角シグナル伝達への影響を解析することができた。その結果、 ACCの活性化は下位中枢の脊髄後角レベルにおける興奮性シグナル伝達の増強をもたらす結果を得ることができた。さらに神経障害性疼痛モデルのラットでは正常ラットより脊髄膠様質ニューロンのEPSCは増強しており、ACCの活性化が寄与している可能性が考えられた。これらの結果はACCの活性化が脊髄後角に下行性疼痛賦活系を形成している可能性を示唆する結果で有り、本研究は順調に遂行できていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い、本年度で得られた結果であるACCの電気刺激による脊髄後角ニューロンの興奮性シグナル伝達の亢進が、実際の痛み刺激にどのような影響を与えるか検討する予定である。正常ラット及び神経障害性疼痛モデルラット (SNI モデル)の2群において、ACC刺激前と刺激直後での末梢皮膚の疼痛刺激・触刺激に発生する脊髄膠様質ニューロンの誘発性EPSCを比較する。さらにSNI モデルにおける自発性EPSCの増強がACCに対するグルタミン酸受容体拮抗薬の投与によって、抑制できるか検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画と実際の進捗状況に若干の差が生じ、未購入機器などがあるため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の研究計画に従い、必要な研究機器や動物・試薬等の消耗品に使用する予定。また研究成果に応じて、国内外での学会等で研究成果を発表・発信する。
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