研究実績の概要 |
変形性脊椎症は椎間板変性及び骨棘形成を伴う変性疾患である。椎間板の発生において髄核にはSonic hedgehog が、椎体終板にはIndian Hedghog が発現する事が知られている。本研究では、椎間板の発生過程と内軟骨性骨化の過程で重要な役割を果たすHedgehog pathwayの膜蛋白であるSmoothened(Smo)の時間特異的ノックアウトマウスを用いて椎間板変性、骨棘形成に与える影響を調査した。 【方法】タモキシフェン(Tam)投与によってSmoの時間特異的なノックアウトを可能とするRosaCreER(T)-Smo/floxマウス (Smo cKO) を使用し対象群との比較を行った。Smo cKO群と対象群それぞれにTamを生後3週、5週、術3日前、術前日に投与した。椎間板変性モデルとして、8週齢でマウスの第4腰椎両側下関節突起を切除し、抗重力運動をさせるため術後1週後から8週間、高さ1mのクライミングケージ内で飼育した。術後9週で屠殺し各種染色を行った。組織学評価として、椎間板変性はMasuda分類を用いて評価し、骨棘はsize, maturityを4段階(0~3)に分けて定量評価した。 【結果】対象群では、椎体終板軟骨に肥大した軟骨細胞を認め、その隅角に骨化した領域があったのに対し、Smo cKO群ではそれらの変化が無い、もしくは明らかに減少していた。椎間板変性はMasuda分類において、対象群では8点以下が60%、9点以上は40%であったのに対しSmo cKO群では8点以下が90%、9点以上が10%であり、Smo cKO群で椎間板変性が有意に抑制されていた。 【結論】Smoothenedをノックアウトすることで椎間板の変性と椎体骨棘の形成が有意に抑制され、椎体における骨棘形成や椎間板変性にはHedgehog pathwayが関与している事が示唆された。
|